愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけない




キスは止まない。胸が熱い。目は見えない。

足りないらしい天化の腰が無音の世界で震えてた。あーくそっ!もう!下腹の辺りに濡れた感触と熱く硬い感触がして、俺は堪らず目を閉じる。そしたらさ、すげー近くにいるコイツの胸の音がして、しかもいつもよりデカくだ。頭の中のオモイヤリも下心も、ごちゃごちゃ絡まったまま、俺の中から削ぎ落とされるような気がしたんだ。全部。
ただ、触れたくて堪らない衝動だけが残ってやがんの。今までどうやって抑えてられたのかわかんねぇぐらい天化の髪を無茶苦茶に混ぜ返したら、止まない乱暴なキスの合間に、ヤツがまた身体を震わせた。

ああもう。そこには、なにか悟りだか超越だかした様な唇の快感だけが愛しく残る。撫でた耳が熱くそこに待ってる。耳が弱いって知ったあの日もきっとそうだったんだ。待ってたんだ、──……ずっと。

キスはやまない。
どうやら俺に擦れて無意識に快感を得てるらしい桃尻を撫でたら、跳ねる腰がおとなしくなった。その後は確信犯っつうか…いや、とまらないんだろ。わかる、とめられねぇんだよな?
柔らかい場所を何度もなするように俺の腹に擦り付けて、天化が腰を前後に振った。まるで初々しく熱く俺を抱くように。濡れた感触は一層腹に広がって、甘酸っぱくて生臭い匂いと感情が競り上がる。待ちわびてんだろう。唇も震わせながら天化の腰が止まらないから、俺も引き寄せて抱き寄せて止まらない。

――……天化。

キスも止まない。
天化が一向に離しちゃくれないからだ。なんてのは言い訳で、俺はもうすっかり骨を抜かれたらしい。こうなりゃ離す気も毛頭ねぇし。
初めて求められる命懸けの口付けに、耳の奥がズキズキ脈を叩き出した。
だんだん渦巻く意識が遠退いて、ああやべぇ、これはマジで!もう既に本能レベルに近い場所でそんな警報が発令された。

──そこから数秒、息が止まる。意識も止まる。音もない場所に天化を縫い止めて朧気に唇を感じたまま。

それは勿論俺だけで、もう舌で応える余裕もないぐらい形にならない本能を棄てて、仕方ないんだと思うんだ。だってよ、夢中な天化が好きで好きで仕方なくて、そんなに欲しがられてんのかと思ったらさ、そりゃ……!!

「――……ふぐッ、っぇ!!」
「え、おっ、王サマ!?」
うわっ…!無理無理無理これ案外キツ!キツイキツイ!
「っが…しぬ…!!」
「王サマ!!」
唐突に流れ込んだ冷たくて濃い酸素に派手にむせる俺の腹の上の天化はでっかい目を白黒させて、そういや初めてだっけ。
「王サマ!!息っ…息してねぇんかっ…あーた…」
困り果てる、そんな意味で余裕のないコイツ見るのって。有り余る一息の差にまだ肩で息をする俺を前にして、でかい目がきょときょと、青くなったり赤くなったり、ついには泣き出しそうだった。
「……お……犯しといて泣くやつがあるかってんだよ、アホ……」
「泣いてねぇさ!」
否定するのが後半部分だってのもどうかと思うけどな。ひくりひくり、涙を堪える子供よろしく震えた天化が、何度か謝罪を細い声で告げていた。ばーか、謝ることじゃねぇだろ。一息とか一秒とか、その辺の換算が既にちょっと違うんだ。わかってて惚れたとは今にして確認することじゃなかったから。
「俺っちは、」
「うん」
「全部感じてなきゃ嫌さ」
「……おう、今のでじゅーぶんわかりすぎた」
「いつもいつも!……俺っちばっか止まんなくて止まんなくなる前に目ぇ瞑んなきゃなんなくて、そんなのッ……」
身体を屈ませた俺の耳元で、謝り終わった唇から"今度優しくするなら別れるかんね"なんて、随分手酷いイエローカードが突き付けられた。ったくもう!
「知らねぇぞ、もう泣いたって離さねぇからな!!」
「へっ…?」
今更わけがわからないなんて顔をされてもどうしようもない訳で、とにもかくにも劣情と愛情が俺を突き動かしていた。つまりそれは全部ぜんぶ、
「……っんか、天化!!」
お前一人なんだよ──!


引っくり返して開かせた脚の付け根に堪らず吸い付いた。
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