まだ桜の蕾が固い頃。
始業式にはちょっとはぇーその日、非常階段のトコにひょろひょろ高い背中が見えた。
それはうちのクラスの王サマで(っちゅーか、今はダレもクラス知らねぇけどさ)、なにしてんのかと思ったら、俺っちに用があるとかねぇとか。いつもに増して煮え切らない王サマが下向いてぐだぐだ言ってる間に、ついに小雨が降り出して、桜の花がはらはら散った。
風が冷たい。
俺っちが「部活遅れるさ」っつったら、熱い腕で腕捕まれて、王サマの唇が「すき」って言った。
はい?──誰が?誰をさ?
意味わかんなくって頭が固まって、「嫌ならそれで良い」……なんて勝手に言ってまた俯くから、「言い逃げする気かい」って腕を引き返した。
王サマはびっくりしたつり目を見開いて、頬に桜が咲いてんの。
だからもっかい腕を引く。
その日から、俺っちと王サマの両想いっぽいのが始まった。
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