話すこと 





なに話せばいいかなー。特別話したいことがある訳じゃねぇ。
「生臭食えないってどんな感じ?」
「別にすぐ慣れるさ」
豊邑を出て少しした。毎日毎日隣にいても、なんつーか噛み合わない。太陽の真下で進軍するってのも、イマイチのどかで妙な感じで慣れない。って、慣れたら終わりか。そーだよな。慣れるモンじゃねーや。
「肉食えないってつまんねぇと思うけど」
「そーかい?」
「俺そこまでストイックじゃないし」
気の利いた言葉が欲しい訳でもねぇけどさ、なんでここで爆笑するかコイツ。腹抱えんなっつの。まだ腹筋割る気かよ。
「ははは…ああ、王サマそんな感じさぁ!」
「お前って結構失礼だよな」
「そうさ?」
「そーだよ」
ぱちくり動くどんぐり目。
「じゃあごめんさ」
「取ってつけかよ」
無礼なトコって修行して直るモンじゃないのか。違うのか。ヘンなバランス。思わず笑ったらムッとした顔。ほんっとヘンなバランス!
「ごめんって、悪かった」
言いながら、俺が謝る必要全然ないんじゃねぇの?と思ったりもして、
「王サマって変わりモンさ」
「どっちがだよ」
また笑ったら今度は笑った。
「煙草っていいの?」
「へ?吸ったことないさ?」
「そうじゃなくて。仙人って煙草吸っていいのかって聞いてんの」
「ああ、生臭じゃないから」
「ああー、」
それ以上どこになに突っ込めばいいんだか。
「酒は?」
「飲めるさー」
「マムシ酒は?」
「そりゃ飲めないさ」
「だよな、生臭だし」
「王サマってやっぱヘンな人さー」
「お前も大概ヘンなヤツだろ」
まったく意味もしまりもない会話。ただそんなに笑ってるの見ると、まぁ、悪い気はしないっつーか。無礼もここまできたら無礼講でいいや。きっとそーゆーヤツなんだろう。
「年いくつ?」
「多分王サマと同じくらいさ」
「ふーん。もっとガキに見えるけどな」
あ、怒ってる怒ってる。露骨に眉毛動くんだからしょーがねぇ。
「そこがガキなんだって」
嫌ならほっぺた膨らますの止めりゃーいいと思うんだけど、その辺どーなんだ。
「やっぱヘンな人さ、あーた」
「天化もな」

実はかなり、いや、とんでもなく意識したその名前も、呼ばれた本人が気にすらしてない。
どうしてここで笑い出すのかわかんねぇ。煙草落とすぞー。

「王サマといると飽きないさ」
「そうか?」
「きっといい王サマになるさ、あーた」
「は?なんで?」
「憎めないひとだからさ」
「だからお前失礼だっつーの」

頭撫でたらケラケラ笑った。コレはいいのか、何処なんだ地雷は。

「わっかんねーヤツ」

面白いじゃん。
コイツが笑っていられるように、ちゃんといい王サマってヤツになってやろうじゃないか。なんて言ったらまた笑うんだろうな。
いつかそれ話してやろう。
お、話すこと一個増えた!

end.
2010/11/15

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