来襲、静寂、ドロップキック(1/4)




ぼんやり開いた目の前で上下する胸は、やっぱり発より焼けていて、だけど色黒な訳じゃない。うーん。伸びをひとつ、結論は"天化色"。天化の朝は早い上にスッキリだ。発が眠っていれば背中を揺さぶって起こされる。
「天化ー」
でもさぁ、寝顔って見てみたいモンじゃん?何度も考えて辿り着いた結論は、
「てーんーかーちゃんっ」
前の晩に疲れさせること、プラス、自分が先に起きること。当たり前過ぎることに、実はなかなか苦労するのが夏休みだ。相乗効果の気だるい寝ぼけ眼に胸が苦しくなる。あったかくて。これは相当重病らしい。
「んんー…」
「…かーわいいヤツ」
あの天化がおとなしく側にいる。幸福な夢の中、"コイツ最近色っぽいんだよなぁ"。体重を移動させながら考えた。
「天化ー」
言うなればあの日から、だ。天化の指が発に触れた日。もしかしてもしなくても、この健康優良児に付随した色っぽさの原因が自分だと気付いてみたら、想像以上に欲するらしい。
「天化ってば」
拍車がかかるもぞもぞ自堕落な夏休み。まだ時計は7時の頃だ。空調の隅で徐々に覚醒する垂れ目の目尻が、力なく発を睨んでいた。
「よ、おはよ」
「……なにさ」
おまけして、完全覚醒より早く酸素を奪ってしまえばいい。奇襲、来襲、そればっかり。飯が、朝ごはんが、形だけひとしきり呟いた唇が、自ら発に重なった。万歳寝起き!今日も後でブランチにしようと、天化色の腰を抱き締めた。

奇襲はその瞬間だった。
「────!!」
飛び上がる発色と天化色。大気が震えた気すらする。
「…なんの音さ?」
「…お前も聞こえた?」
見合わせた目がまばたきする間にもう一発、────ガン!!確かに玄関ドアの金属と鈍器のぶつかる鈍い音だ。なんだってマンションの部屋で?玄関にしたってエントランスで鳴る筈のブザーもなければ断りもない。いよいよ近付く敵が放った。
「発兄────!!オレ様が遊びに来てやったぜ!!」
「ばっかてめぇどっから入ってきたんだよ!?」
「ヒーローに不可能はないんだぜっ」
ああ、早朝の新聞かゴルフ便の配達員の背後から。
「おい!てかなんで」
「夏休みじゃんか!」
ああ暇なのか。つまり"遊んで"。我が物顔で走る裸足がペタペタフローリングをやっつける。142センチの猛攻。慌ててジーンズに素足を突っ込んだ天化が、間一髪シーツを剥がして丸めて放り投げた。
「……ん?おめー誰?発兄、誰だよコイツ?」
「いい躾してるじゃん王サマ」
しまった、下着も一緒だったらしい。かくして身長差頭一つ。気まずいコンビの火蓋は切って落とされた。

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