煙草とperfume(*)(2/3)




「…天化?」
有無を言わさず。その通り荒っぽく引っつかまれた髪が痛い。社員の手前。立場上整えてる整髪料の匂いが忘れ去ってた今香って、久々のキスに酔った。

どうしたんだ、珍しい。煙草の匂いに天化の味。引きずり込まれたベッドの感触も久しぶり。
もっと酔っていい?あーでもそれより先進んでいい?なに怒ってんだ?
「な、なんか妬いてんの?」
返事なし。
「もしかして寂しかった?」
「…黙るさ」
その四文字で、あーもう止まらねぇ。相変わらず鋭い目はご機嫌斜めだけど、あーもうあーもう!

髪撫でると睨まれる。抱き締めたら首が違う方向く。
キスは許す癖に。身体だって許す癖に。
「……天化…」
呼びかけたら震える癖に。悦んでる癖に。
「…ッ、う…」
うつ伏せて噛み殺した声も、知ってる。最初はどーにかこーにか艶っぽい声出さねぇかなーって思ったモンだけど、今はこの声が天化のそーゆー意味の声なんだって解釈に辿り着いて、もう何年だ?
毎回毎回その声を直に聞いてる枕が恨めしい。今抱いてる俺と、枕んなって声聞いてる俺と、身体二つあったらいいのに。
「はっ、」
「…ん?」
息つぎなのか俺を呼んでるのか、後者に解釈出来る名前って便利だなーありがとうおやじ!なんて思ったのも、もう何年前からか覚えちゃいねぇ。
「…発、…ちゃん」
「おう、天化」
久しぶり。
ダイレクトに呼ばれたの久しぶり。あーもう!
こんなことで嬉しくて顔を埋めた襟足は、シャンプーと煙草と、汗と雄の天化の匂い。口付ければそれだけで跳ね上がる首と背中と真っ赤な耳と、走る息と、これ開発したの全部俺だぞ!
天化の襟足がいつまでももさもさ長いのは、俺が噛み付く痕が残るから。最初はそーゆー意味じゃなかったそれが、いつの間にかその意味も持ち合わせてる。
頭ごと抱え込んで名前呼んでる俺の手に、天化の手が重なったのはそれからちょっと後だった。

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