「……普賢、ウチの生徒が二人――」
音を立てずに開いた保健室の扉。覗く指し棒と童顔に、華奢な人差し指を立てるシルエットが揺れた。
「静かにね。――ぐっすり眠ってるよ」
カーテンの中の並んだベッド。真っ白い糊の効いたシーツの上でジャージの身体がふたつ。
大の字に転がった。
微かに上下する胸と、あどけない子供の寝顔。
「コレ、どうしようか?どうせもう吸えないけど…」
ハンガーにかかったずぶ濡れのブレザーの内ポケットを指して、普賢が笑う。
「むぅ…良い!放っとけ」
重なる望の笑い声。
「どこまで知ってたの?望ちゃん」
「この時間のサブグラは授業使用予定がない。それだけじゃ!こやつら少しは発散させた方が良いだろう」
流石にホースで水とは思わなかったがのう、望の呟きに普賢が笑う。
「懐かしいね、ボクたちみたい。」
「…これほど荒っぽくなかったがの」
「もう10年以上も前なのかぁ…」
担任と校内カウンセラーの声。
「明日から衣替えだし、ちょうどいいね」
雲の切れ間から覗く太陽が笑う。
穏やかに照らされる保健室のベッドの隅で、小さく堅く結ばれた幼い人差し指。
名前なんてなくていい。今はそれだけで温かいから。
end.
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やっとホントにうちとけてくれた…と思う!ラブラブまでもうちょっとです(笑)
2010/11/21