・弱虫のいじめられっ子、ある日の発くん

「うぇっ…くひっ…うﾞぁぁあﾞぁあﾞんあんぢゃぁぁん!!っく、えっく…みんながイタイタイするぅぅー…痛いのやぁぁぁぁんなかまはずれっ、やらぁぁ！発悪くないもんんっ…──！」
「ぼくの弟に手をだすなっ！発、もうだいじょうぶだよ。みんなにはぼくが言っておくから…泣かないでおくれ」
「マジで!?よっしゃ！んじゃ〜あと頼んだぜあんちゃん！サンキュー！ガツンと言っといてくれよなっ」
「え、えっ？ちょ、発!?」

弱虫のいじめられっ子発くん……？


・帰ってみると

「あれ？ぼくのおやつが…今日の月餅は父上の古くからの御友人がぼくたちにって…みんなで分けて食べようねって……」
「ふー、はらいっぱい！お昼寝お昼寝！」
「発！その口についた餡は!?」
「デヘヘ、バレたかー。さっすが！鋭いなあんちゃん！ごっそーさま！」
「発の分はあっただろう!?」
「菓子さえありゃーどうとでもなるもんさ！」
「今日という今日はゲンコツだからね！」
「あっ、父上！」
「えっ？──!?発!?発!?」


・ぼくのお腹はペコペコですが

「はくにいたま、はくにいたま！」
「どうしたんだい？旦」
「あの、ちいにいたまがわたしにこれをって……！」
「？」
「月餅がいっこあるから、内緒ではんぶんこにしようって……はんぶん旦にもくださいましたっ！」
「(…！…そういうことだったのか…)」
「いつもわたしがご馳走をもっと食べたいですとわがままを言っていたから…ちいにいさまがはんぶんこと…でも……はくにいたまの月餅だったのですね…」
「わかったよ旦。ぼくはいいんだ。美味しかったかい？」
「はいっ！──はくにいたまもちいにいたまも、旦のじまんのあにうえたまです！」
「！」

・雨降って地固まる

「発、怒らないから隠れてないで出ておいで」
「……あ、あんちゃーん」
「さっきの月餅は旦に分けてあげたんだね。旦から聞いたよ」
「っ！」
「ぼくのものを無断で食べたのは悪いことだけど、発は立派なお兄さんだな。だからゲンコツもしないし、父上にも内緒にするよ。──今度はみんなで一緒にいただこう？」
「へへ、やーりぃ！こうすりゃ旦もキョーハンってヤツだもんな！やっぱあんちゃんチョロいやー」
「────!!!!」

純粋で生真面目な兄と弟の手によって培われたハッタリ上手の遊び人である。