鮮やかに彩られたイルミネーション、恋人たちで賑わう街、世間はクリスマス。そんなことは一切関係なく、今日も雷門中サッカー部は練習だった。
練習を終えた剣城京介と狩屋マサキは光り輝く街とは違う薄暗く人気の少ない帰路を歩いていた。
「おなかすいた」
「寒い」
「おでん食べたい」
「寒い」
「やっぱ肉まんもいいなあ」
「寒い」
「コンビニいこ」
「遠回りだろ寒い」
それでもコンビニに行きたいと駄々をこねる狩屋を剣城が冷たくあしらう。もーなんなの!と狩屋は剥れた。
「剣城サンタさん僕肉まん欲しいなー」
「マサキくんいい子じゃなかったからダメデス」
「えー僕いい子にしてたよー?」
「はっ」
「おいなんで鼻で笑った」
そんなくだらないやりとりをしているとびゅうっと強い風が吹いた。二人はぎゅっと身を縮ませそれが落ち着くまで耐える。
「〜〜〜っ!さっむ!」
むり!しぬ!とギャンギャン騒ぐ狩屋と静かに震えている剣城。この時二人の頭の中からコンビニにいくという選択肢は消えた。
しばらくして風が少しおさまった。
「剣城くんでかいんだから風除けになってよ」
「殴るぞ」
「だって寒い」
「俺も寒い」
ぶーぶーと文句を垂れていた狩屋が思い出したように声を発し、そういえばと続けた。
「剣城くんって体温高かったよねー」
「…狩屋が低すぎるんだ」
「うん、だからさ」
待て、と剣城が手を差し出そうとした狩屋を止める。不満そうな狩屋を見た剣城の頬が引きつった。
「…おい、まさか」
「うんそのまさか」
「いや待て落ち着け」
「剣城くんこういうの好きでしょ?」
意外とロマンチストだもんね、とニヤニヤ笑う狩屋とさらにひきつった剣城。
「クリスマスで頭おかしくなったか」
「狩屋サンタからプレゼントだよ」
「人きたらどうするんだ」
「暗いしすぐ離したらバレないでしょ」
渋る剣城を急かす狩屋。暫くの無言の後、剣城が目を逸らし口元をマフラーで隠した。それを見た狩屋がぶはっと笑い手を差し出す。
じんわりと少しだけ暖かくなった手を見て、狩屋はまた笑った。
「剣城くんかわいー」
「…お前ほんと腹立つな」
「今なら何言われても大丈夫だわ。すっげー勝った気分!」
「…………、お前の方がかわいいよ」
「え、」
満足気な顔がなんか異常に腹立ったから口を塞いでやった
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