プリクラ撮りました


「そうだ、プリクラを撮ろう!」


珍しく部活が早く終わりそれぞれが部室で着替えながら、これから何か食べにいくかなど話していた時だ。松風が急に言った。松風の周りにいた西園、影山、狩屋は目を見開いて顔を見合わせた。あのサッカー馬鹿の松風が、と。時間があれば自主練とか言いそうなのに、と。ただし剣城は自分には関係ないと言うかのように静かに着替えを続けていたが。


「天馬?どうしたの急に?」
「行こうよ!よく考えたらこのメンバーで遊んだことないじゃん!」
「たしかにそうだけど…」
「なんでプリクラ?」


狩屋がそう聞けば「記念だよ!」と松風は言った。それに「それいいね!」と乗った西園。影山も乗り気だ。狩屋だけは唸っていた。


「あ、もちろん剣城もだから!」
「は?」
「当たり前でしょ!」
「いや俺は」
「はい決定!」


こうなってしまえばもう聞かない松風に剣城は大きな溜め息を吐いた。狩屋はそれを慰めるように肩を軽く叩いた。


「でもさあ天馬くん、プリクラって男子禁制じゃないの?」
「そうなの?」
「2年の先輩たちが錦先輩帰ってきた記念に撮りにいった話を霧野先輩から聞いたんだけど、入口に書いてたって」
「そうなんだ」
「霧野先輩たちはばれなかったらしいけど」
「「「あー…」」」


まあ、霧野先輩なら、うん、そりゃあね、と霧野の容姿を思い浮かべて全員が思った。じゃあ諦めるしかない、と少し嬉しそうな剣城と狩屋。だが、そんなことであの松風が諦めるはずがなかった。


「大丈夫だよ」
「葵ちゃん呼ぶの?」
「葵は今日用事あるんだって」
「じゃあどうするの?」
「狩屋がいる!」
「は?俺?」
「狩屋見た目女の子だから!」


だからきっと大丈夫!と満足そうに笑う松風に、そうだねと嬉々する西園と影山。
言われた狩屋本人は唖然としてから、この間剣城に言われたことを思い出す。そして勢いよく剣城を睨んだ。その表情に少し焦りながら剣城は俺じゃないと首を振った。
じゃあみんな俺のこと女の子っぽいって思ってるのか…!とあからさまに落ち込んだ狩屋に、今度は剣城が慰めるように肩を軽く叩いた。



「よしじゃあ早く行こう!」
「「おー!」」
「「…おー」」


そう言って荷物を持って駆け出す3人。それをゆっくりと追う2人。
隣で未だぐちぐちと嫌そうな顔をする狩屋を見て剣城は思っていた。どうせ自分が1番楽しむくせに、と。


「もうほんとあのノリついていけない…」
「まあ、いいんじゃないか?たまには」


ふ、と剣城は前を走る松風たちを見ながら小さく笑った。


「なんだよ?」
「べ、べつにっ」


それを唖然として見ていた狩屋の視線に気付いた剣城がそう聞くと、狩屋はそっぽ向く。
疑問に思う剣城の隣で狩屋は人知れず思った。


「(きゅんってなんだよ俺ええええええ)」


それから、プリクラを撮る時に結局ばれなくてまた狩屋は落ち込むことになる。









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -