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「さて琴吹、話を聞こうじゃねえか。」
隊長、青筋ってこんなにも肉眼で確認できるんですね。
瀞霊廷に戻ってきた俺はそのまま阿散井副隊長によって十番隊へと連行された。今頃、お偉いさん達がルキアの罰について話し合っているのだろう。正直今すぐにでもルキアを助けに行きたいが、俺一人の力でどうにかなるような問題ではないし、何よりこの現状は自業自得なので静かに日番谷隊長のお叱りを受ける。
「ねえ雅〜お土産は?」
茶菓子を食べながら俺達を眺めていた松本副隊長が言った。土産か、そんな事全然頭になかったな。土産話でもいいかな。浦原喜助と四楓院夜一と握菱鉄裁と滅却師の生き残りに会いましたよ、とか。いや止めとこう殺されそうだ。
すみません無いです、と告げる俺に副隊長は不満を垂れた。そして本日何度目か分からない隊長の怒号が響くのだ。
「で、お前は何処で何やってたんだ?」
言えるわけがないだろう。現世で浦原喜助の所に身を寄せて行方不明だった朽木ルキアから力を渡された死神代行と滅却師の生き残りとドンパチやってました、なんて。
話が進まないと副隊長を追い出して本題に戻った隊長に、俺は答えを濁す。
「あーまあ、色々と…」
「俺はその色々を聞いているんだが。」
答えられなくもないが、答えたくない。だって絶対面倒臭くなる。
渋る俺を見て隊長はため息を吐いて一つ零した。
「ったく、総隊長も放っておけだとか言うし…」
おい帰還命令出てねえじゃねえか。
「…帰還命令は?」
「出てねえし出してねえ。出すつもりはあったがな。」
ちょっと朽木白哉しばいてきてもいいか。いやしないけどさ。彼がどういうつもりで嘘をついたのか、いや、ついてしまったのかはわからない。けれど、俺の腕を掴んだ彼の瞳は、幼い頃の彼の瞳に酷似していた。
「全部終わったら、きちんと話します。」
まだ納得のいっていない様子の日番谷隊長に俺は笑った。約束しますだなんて、説得力の欠片もない事を。口約束は好きではない。