01

八番隊舎の裏にある大きな桜の木の下。100数年前に彼女と出会ったその木も、今では俺のただの昼寝スポットである。


「起きろアホ雅。」
「…おはよ、修兵。」
「おはよじゃねえよ。」


まったく、と大きな溜め息を吐きながら俺に手を差し伸べたのは、九番隊副隊長を務める檜佐木修兵。俺の友人だ。


「また日番谷隊長怒ってるぞ」
「知ってる。」


その手を取りながら苦笑いをこぼす。
こびりついたサボリ癖はいつまで経っても抜けない。たとえ上司の怒りを買おうとも。


「もっと平隊員って自覚しろよ。」
「してるよ?」
「どこがだ?」
「痛っ」


頭を軽く叩かれたことを非難すれば適当に相槌を打たれた。


「…どうした?」
「ん?ああ、いや」


ざあっと心地好い風が吹き、空を仰ぐ。


「平和だなあって。」


お前がサボらずにちゃんと仕事してればもっとな、なんて修兵には笑われてしまったけど。それとは全く関係なく、なんとなく、言葉に出さなければ良かったと後悔するのだ。


平和な日常など、望めば望むほど手に入らないことは、誰よりも俺が知っている。


この数日後、友人である朽木ルキアが行方不明になったことを知らされた。



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