16
両手に包帯を巻いた石田雨竜と学校の入口でばったり遇った。
「おはよう。怪我大丈夫か?」
「え…お、おはよう。うん、大丈夫。」
俺に声を掛けられると思ってなかった様で、彼は少し驚きを見せた後しどろもどろに答えた。本当ならば二、三発殴ってやりたいが本人も周りを巻き込んだ事は反省しているみたいだし、それより今はもっと大切な事がある。
「それじゃあ。」
「え、今3時間目じゃ…」
「早退。まさか石田と会うとは思わなかったけど。」
彼の名をそう呼んだ事に、特別な意味はなかった。仲良くなったとかなりたいとか、そういう次元の話ではないのだ。過去は決して消えない。それをどう清算するか、なのである。
俺は石田に再び別れを告げ、浦原商店へ戻った。
ら、猫がいた。
「帰ったか。」
「喋った…」
「儂じゃよ、夜一じゃ。久しいな。」
「まじか」
喜助の無事がわかった時に夜一も無事だと思っていたから驚くことはない。ただ猫になっているのは予想外だった。
「何で猫?」
「何かと都合が良くてな、それより雅。」
良かった、変な呪いとかじゃないのか。俺はしゃがみ込んで猫である夜一の頭を撫でた。
「わかっておるのだろう?」
「…ああ、来てるね。」
だから授業を抜け出して店に戻って来たのだ。これでルキアの事が尸魂界に伝わったと確定した。しかも、選りに選ってこの面子。
「行くのか。」
「…うん。」
俺にできることはないのかもしれないけど、もう見ているだけは嫌だから。