15

「雅さーん!黒崎さーん!助けに来ましたよーん♪」
「ゲタ帽子!?」
「喜助…!」


俺は安心した様に息を吐いた。
喜助が来たのならもう大丈夫だ。俺はその辺りの雑魚を相手しよう。力が足りないというのも事実だが、正直あれを相手に出来る精神状態ではない。こっちは任せよう。


「雅さん、顔色悪いですよ?」
「…お前まじ、ふざけんなよ。」


結果から言えば、あの大虚は一護が倒した。倒したと言うよりは追い返したと言う方が正しいが。喜助が来たから大丈夫だと思っていたのに、何も大丈夫じゃなかった。どうやら喜助は本当に手伝いに来ただけだったらしい。


「終わり良ければ全て良しっス!」


どこがだ。何も良くない。良くなったのは一護と石田雨竜の関係性くらいだ。それもごく僅か。いい笑顔で言う喜助の頭をそれなりの力で鷲掴んでおく。
この件に巻き込まれて怪我をした一般人だっているだろう。何より、大虚が現れ死神代行が撃退した、という情報が尸魂界に伝わっているはずだ。おそらく、それと同時にルキアの事も。


「痛いですよ雅さん!」
「痛くしたんだよ。」


俺の事も伝わっている可能性があるがどうでもいい。どうとでもする。だがルキアは、罪人として尸魂界に戻らなければならない。そしてきっと、裁かれる事になる。


「雅さん、ずっと気になってたんスけどそれ浅打ですよね?」
「おー」


ルキアの処罰を決めるのは上の仕事で、俺にそれを止める力はない。と言っても人間への死神能力の譲渡は重罪、どれほどの罰が与えられるかなんて考えるまでもない。俺に出来ることは何だ。


「斬魄刀、どうしたんスか?」
「持ってない。」
「何でですか?斬魄刀があれば雅さんそんなに…」


「棄てた。」


目を大きく見開いた喜助に、俺は自嘲の笑いを浮かべた。今この手に、かつて持っていたモノがあれば、何かが変わるのだろうか。



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テーマ「人外ファンタジー」
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