14
「一護!」
「雅!…ってオイ何だその数!?」
もし一般人に被害が及ぶことになれば喜助が何とかするだろうと踏んで、俺は一護と合流しようとあの場から逃げ出した。そして石田雨竜と揉めている一護を見付け、駆け寄る。途中寄ってきてさらに数を増した大量の虚を引き連れて。
俺を追う虚の群にギョッと目を剥く二人。俺は一護に叫んだ。
「これ、任せた!」
「はああ!?ふざけんな!」
不満を垂れながらもばっさばっさと虚を薙ぎ倒していく一護。そして俺は石田雨竜と初めて言葉を交わした。
「はじめまして、と言うべきか?」
「…やあ、死神。僕は滅却師だ。」
怒り、悲しみ、嘆き。恨みという感情はとても難しい。
「君は、石田雨竜だろ?」
一瞬目を見張った彼に一瞥を投げ、俺は一護の元へ向かった。
「おい雅!お前なんかすげー必殺技とかねえのか!」
「俺クソ弱いって言っただろ!…って、あ?」
襲いかかってきていた虚がまるで祈るように天を仰ぐ。その先を目で追うと、一点に集まって大きくなった空紋が開いた。
そこから現れたものは、大虚。
「何だよあれ…!?デカイなんてもんじゃねえぞ!あれも虚か!?」
「ぼ…僕が知るわけないだろう!」
一護と石田雨竜の口喧嘩など耳にも入らなかった。それ程俺は動揺していた。だって、おかしいだろ。石田雨竜が呼び寄せた虚の数だって、あり得ない。それに加えてこの大虚の出現。これがただの偶然という言葉で済ませられるか?
「(ああ、そうか…)」
何かがまた、始まるんだな。