12

「てことで尾行するぞ。」
「待て、全くわからん。」


翌日、一護に事の次第を説明してもらった。虚が消える原因は俺の前の席に座る眼鏡の少年、名を石田雨竜と言うそうだ。高い霊力を持っているとことは分かっていたが、滅却師だったとは。そして彼が言ったらしい「死神を恨む」という言葉。おそらく彼は俺が死神だということも分かっていて、きっとその言葉の中に俺も含まれている。彼が死神に恨みを持つ事はごく自然な事だが、それを知らない一護は突然意味の分からない喧嘩を売られて腹を立てているようだ。


「…正直関わりたくない。」
「つっても雅も喧嘩売られてんぞ。」
「自慢じゃないけど俺はクソ弱いぞ。」
「おいまじかよ。」


原因は分かった。滅却師が関わっているのというのもなかなか面倒臭いが、最悪の場合になれば喜助が動くだろう。そもそも何の力も持たない今の俺にできることはない。それよりも俺にはどうすればルキアの力が戻るのかという事と、どうすれば尸魂界に戻った時に日番谷隊長の怒りを軽く出来るかが問題である。
尾行するなら一人でやってくれ、と告げると一護は不服そうな顔をした。と言うより、何故尾行なのかが謎だ。


「そういや雅が虚倒すとこっつーか死神姿すら見たことねーんだけど。」


一護がふと思い出した様に言った。そういえばそうだなと同意する。ちょっとは手伝えよなと軽口を叩く一護を、俺は笑って誤魔化す事しか出来なかった。
だって俺は、力を棄てたのだから。


その日、その教室に居た多くの人々の運命が悉く変わる事を、俺はまだ知らない。

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