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日番谷冬獅郎は苛立っていた。


その原因は彼の隊に所属する琴吹雅にある。元々よく仕事を放置し放浪する癖があり、普段は彼の友人である檜佐木が回収し日番谷が怒鳴るというお決まりのパターンであったが、今回は違った。琴吹が現世へ逃げ出したのである。
少し出掛けます。という書き置きが先日、琴吹の仕事机に残っていたのを見つけた日番谷は、常日頃積もった鬱憤を晴らすため直々に琴吹を探しに行ったのだ。
しかし、彼はどこにもいなかった。檜佐木に協力を仰いだが琴吹は見つからず、日番谷も隊長という身、帰って来たら殴ろうと心に決めその日は仕事に戻ったのだ。


そして数刻前、一番隊舎にて各隊の隊長が集まり定例会議が行われた。と言っても全員が揃うことはなく、何人か欠けていた。
今回はいつも通りの報告や連絡に加え、数日前に行方不明になった朽木ルキアの件が話されていた。琴吹の事は隊の問題であるし、ただの平隊員の脱走であり大きな事件に巻き込まれた訳でもない。報告する程の事ではないと自己完結した日番谷は静かに会議に耳を傾けていた。


会議が終わりを迎えそうになった時だった。
一番隊長の山本が日番谷の名を呼ぶ。そして次の山本の言葉に日番谷は目を見張った。


「十番隊の琴吹雅の事だが、」


何故、それを。
動揺する日番谷を尻目に十二番隊長の涅が口を開いた。


「うちの阿近が手引きしたようだネ。」


悪びれる様子もない涅に日番谷は困惑する。どういうことだ。何故阿近が。あいつの交友関係どうなってやがる。いや今はそこじゃない。眉間の皺が普段より三割増しに深くなった日番谷に山本が言った。


「彼奴の事は、放っておけ。」


山本が会議の終わりを告げる。呆然と立ち尽くしていた日番谷の頭が一つの答えに辿り着いた。とりあえず、戻って来たらぶっ飛ばす。そうして日番谷は一番隊舎を後にしたのだった。

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