■家に帰ると母が武将をry
「……戦国…武将…………？」
「そうよ！」
「……住むの？ここに？今日から？」
「ええ！」
「……………………そうなんだ」
なんて言えばいいのかな。よくわかんないけど、とりあえずうちの母が馬鹿なことだけはわかった。戦国武将ってどんな嘘だ。どうせつくならもっとマシな嘘をつけ。というか住むのか。まじか。戦国武将(仮)の大部分が嫌そうだけど住むのか。どうしてそうなった。
「ほらこっちきて」
「は？」
「娘の名前です。仲良くしてあげてね」
「………どうも」
我が母よ、戦国武将(仮)さんたちめっちゃ嫌そうなんですが。挨拶したらめっちゃ睨まれたんですが。何人かから舌打ちが聞こえたんですが。申し訳なさそうにしてる人もいるけど。
「じゃあ次こっちね」
「え」
そう言って母は戦国武将(仮)を紹介し始めた。伊達政宗、片倉小十郎、真田幸村、猿飛佐助、毛利元就、長宗我部元親。わあ、なんて有名人。
「あ、あのっ！某、」
「旦那？」
「うっ………し、しかし…」
「ん？なあに？」
「…………なんでもないでござる」
口を開いた真田幸村を猿飛佐助が黙らせた。うわあ、こわい。ちなみにそわそわと申し訳なさそうにしてるのは真田幸村である。
とりあえず。
「散歩いってくる」
「説明聞かなくていいの？」
「うん」
この状況を聞いてどうしろと。理解できる気がしない。というか聞くのすらめんどくさい。実は夢だったとかそんなオチないかな。ないよね。
おそらく戦国武将(仮)たちに怯えて私の部屋に逃げ込んでいるだろう愛しのペットたちを迎えに行く。
ここで私のかわいいかわいいペットたちを紹介しよう。
オス犬の○。私が小さいころ拾った。もうおじいちゃん。病気もちだから心配。
オス猫のみい。私はみーちゃんと呼んでいる。なかなかツンデレでかわいい子。女の子みたいな名前なのは仕方ない、みいみい鳴いてたんだもん。
それからオス犬のゴン。でかい。犬！って感じの子。友人の親犬から産まれて譲り受けた。
この子たちが私の癒しである。
意味のわからん戦国武将など放っておいて早く癒されようと足早に階段を登る。ゴンとみーちゃんの鳴き声が聞こえてきた。またケンカしてるのかな？と思いながら部屋のドアを開けた。
ら、なんかいた。
「……………………」
「……………………」
ゴンにじゃれられ、みーちゃんに威嚇され、なんとなく戸惑っている様な男。全体的に黒い服に目が隠れている兜？そしてなにより目立つ赤髪。まさか。
「……ゴン、」
「っ！」
「………、こっちおいで」
私の声に少し身構えた男とわんと元気よく吠えて駆け寄ってくるゴン。威嚇し続けるみーちゃんを撫で、みーちゃんの後ろで我関せずと寝ていた○を抱き上げる。
私の一挙一動に視線がまあ刺さる刺さる。うっとうしい。着がえて散歩行きたいんだけどな、どうしよ。
「……あの」
「…………」
「着がえたいんですけど」
「…………」
「.…………」
「…………」
え、無視？仕方ない、このまま散歩に行こう。
散歩だよ、とゴンに声をかければしっぽをブンブン振りながらリードなどのお散歩セットをとりにいった。うちのペットたちは賢くて助かる。
抱き上げたままの○を撫で、まだ男を威嚇し続けるみーちゃんを撫で、戻ってきたゴンからお散歩セットを受け取り撫でる。うん、癒される。
じゃあ行こうかと部屋を出ようとした時、男が道を塞いだ。
「………」
「………」
「…なんですか？」
「………」
「…何か用ですか？」
「………」
なにこの人。もしかして日本語わからない？でも下にいた人たちはわかってたみたいだし、てことは戦国時代と多少言葉遣いが違うことはあっても通じないことはないはず。ほんとに戦国時代からきたかどうかは知らんが。失語症？失声症？というかまず意思疎通できてるのかな。
「下にいるお仲間のところいかないんですか」
考えることがめんどくさくなってため息を吐きながら投げやりに言うと、男は首を左右に振った。伝わってんのかよ。
「…？」
男がぱくぱくと口を開いた。
「…お、あ？」
男がまた首を左右に振った。口パクじゃわかんねーよ喋れ。
「…声でないんですか？」
「（ふるふる）」
「喋りたくないんですか？」
そう聞くと男は少し間を空けて首を傾げ、ぱくぱくと口を開いた。
「…い、つお…？ない……？あ、必要ない？」
「（こくり）」
いや、必要あるよ。現在進行形で超必要だよ。
「ええと、とりあえず、下にいる人たちと同じとこから来たんですよね？」
「（こくり）」
うん、よし、私には関係ない人だ。
「じゃあ下いってください」
「（ふるふる）」
「…なんで」
だから口パクされてもわかんないっつの。イエスノーで答えられるようにしなきゃいけないの？なんで私が？めんどくさい。
「はいかいいえで答えられる質問にするので嘘つかずに答えてください。答えがわからなかったり曖昧だった場合は無反応でお願いします。」
「（こくり）」
「今の状況は理解できていますか？」
「………」
え、いきなり詰んだ。
おじいちゃん犬の名前は思いつかなかったのでとりあえず○で(笑)ちなみにペット3匹のモデルはあの3人です(笑)