ネタメモ | ナノ
■hq月島と長身女子2


烏野高校に入学して一ヶ月が経ち、部活に入っていない友人達と放課後教室に居残って雑談するのが日課になっていた。最初は手探りだった会話も一ヶ月も経てば遠慮もなくなってくるわけで、そしてやはり女の子が数人集まって交わされる話は必然的に一つになる。

「2組の山本と佐藤が付き合い出したってー」
「はっや!まだ一ヶ月だべ」
「どうせすぐ別れるよ山本そんな顔してる」
「失礼すぎるwwww」

こういう話題になると口数が少なくなってしまうのはもう仕方がない。人の話を聞くのは好きだが、自分に回ってきたときが面倒臭い。袋からポッキーを一本取り出した。

「私も彼氏ほしいー!」
「2年の小林先輩かっこいいよ」
「あ、サッカー部の?」
「断固5組池田くん」
「ないわー」
「ミサまじ趣味悪いよ」
「はあ!?小林先輩のがないわ!」


「ね、名前は?」


こういう話題だと、どうしても、自分の醜さを実感してしまう。


「あー…月島くんとか?」
「わかる顔はかっこいいよね」
「顔はね」
「え、性格悪いの?」
「いや知らないけど、なんか近寄り難い」
「あー」

きっとみんなには、私の気持ちなんてわからないんだろうなあ。
ハッとして、一瞬湧き上がった汚い感情をすぐに押し込んだ。


その時、教室のドアが開いた。

「…っお、びびったー」
「先生かと思った」
「どしたの?」

そこにいたのは月島くんとその友人の山口くんだった。月島くんは無言で自分の席に向かい、私達の問いには山口くんが答えてくれた。どうやら月島くんが忘れ物をして部活の休憩中に取りにきたらしい。山口くんは付き添いだそうだ。

「お菓子いる?」
「まじ?食べる」
「よし山口同罪ねー」
「…月島くんはー?」

なんというか、ここで月島くんに話を振らない訳にもいかないというか。本人は話しかけられない方が良いのだろうが、流れというか雰囲気というか。ハルカがんばったな、まあ断わられるだろうね、多分ね。なんてアイコンタクトをしていると、月島くんは何を思ったのだろうか。

「いる」

私達は瞠目した。
え、いるの?まじで?みたいな私達の視線を気にすることなく近付いてきた月島くんに、私は慌ててポッキーの袋を差し出す。

「…ドーゾ」
「…ドーモ」

そう言って月島くんはその中から一本取り出して踵を返した。ポッキーを食べながら教室を出る二人の後ろ姿を、まさか受けとるとは思ってなかった私達は呆然と見送る。二人の足音が聞こえなくなったところで、ぽつりとマキコちゃんが呟いた。

「月島ってお菓子食べるんだ」
「そりゃお菓子くらい食べるんじゃないの、アタシも思ったけど」

びっくりしたねーと笑う彼女達に遅れながら同意した。後々考えると、この時初めて月島くんの顔をちゃんと見た気がする。



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