年下ぶった演技で見上げて来た

背中に感じる温もりに微睡む意識を頭を振って覚醒させる。
「まこちゃーん 更新したデータだよー。」
片手を背泳ぎのように後ろへ回す。
「サンキュ。」
資料を受け取ったのを確認し、手を戻す。
「ねー いつになったら潰す作戦一緒に立てさせてくれるのー。」
体重を後ろに掛けても花宮の背中はびくともせず、ズルズルと自分の体が滑り 肉体的には楽でも背骨には負担を掛ける座り方になってしまう。
「しつこい。大人しくしてろ。あのクソ監督居なくなってから仕事増えて大変なんだよ。」
花宮の希望通り監督は居なくなって 彼がその職務を担当している。
「大変なら尚更うわっ」
急に立ち上がられたせいでそのまますてんと床に仰向けに寝転んでしまう。文句を言おうと口を開けば花宮は屈み込んで唇に噛み付いて来た。それなのに彼のキスはとても柔らかくて優しい。
チクッとする痛みと優しさの間をふわふわ漂う感覚に身を任せる。
「おいコラ“彼氏”が頑張ってんのに寝ようとすんじゃねーよ。」
「ん...ごめ...。」
「あーでも10時か、忙しいのはオレだけじゃねーしな。帰るわ。」
ひょいと抱き上げられ ベッドに寝かされる。
「ちゃんと休めよ?」
「待って、相談があるからまこちゃんを呼んだのに。それにもう遅いし泊まっていけば?」
ベッドに座り直して腕を引く。リンチされかけてから、
放課後→体育館→部室→花宮の自宅→私の自宅
と言うサイクルから“花宮の自宅”がカットされた。因みに今は“私の自宅”地点。
「.........わかった。そうする。で、話は?」
逡巡してから 床に座り、続きを促すように私を見る。うわっ花宮を見下ろすって新鮮。相変わらず目大きいな。
「新しく入る新入生についてだけど、次の子達に“キセキの世代”がいるでしょ?誰をスカウトするか話し合おうと...。」
「あいつらは霧崎にいらねーよ。」
「私的には紫原と黒子、後キセキじゃなくなったけど灰崎がお勧めだね。赤司と緑間は賢いけど私達には合わないし、青峰と黄瀬は...って...えぇ!?」
「一回で聞けよ。キセキの世代は入れねぇ。」
「どうして?正直誰か一人手に入れないと厳しいよ?あの子達の強さと成長は恐怖でもあるのに。」
キセキの世代の実力は充分知り尽くしているつもりだ。だからこそ試合に生き残るには必要不可欠なのに。
「これからスタメンはオレと瀬戸、原、山崎で行く。後はオレらのやり方を理解する一部の先輩。 それに手に入れたら潰せねぇだろ?」
成程 そういう事か。勝つのが目標じゃ無いんだね。
「でも、冬はどうするの?夏のインハイ終わったら三年生は卒部でしょ?もう一人いるんじゃない?」
「そう思うなら探して下さいよ。マネージャーさん?」
花宮は意地の悪い笑みを浮かべ急に年下ぶった演技で見上げて来た。


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