彼は笑顔で踏みつけた

地面の冷たさに体が軋む。音だけで人数把握。七人ってとこだろうか。腕を縛られた状態では分が悪い。それでも柱か何かに縛り付けて無いのを見ると舐められてる様子。男達の死角となるように腕を捻りスカートのポケットからケータイを取り出す。そして態と呻き声を出す。
「ん....う”....。」
「起きたか。」
背中でケータイを操作しながら、
「ここ…どこ?」
「港の近くにある倉庫の一番奥。」
「漫画やドラマでよくある感じ〜?」
「あはははは」
「目的は?素早く簡潔に教えて。」
笑っていた男達は私の言葉に声を潜める。
「素早くって言ったのに....金?殴る?犯す?人質?」
「....全部だよ。」
「残念ながら最後の二つ、特に人質の価値は無いね。駒を切り捨てる事に躊躇なんてしないからあの人は。」
「よく言うぜ 彼女のクセに。」
「朝帰りで花宮の体操服着てんだろ?」
「熱い夜を過ごしたんですか〜?」
胸元に刺繍された名前を指され下卑た笑いが再び響く。暗くてよく確認していなかったがTシャツだと思ったのは体操服だったらしい。
「花宮が何したって言うの?」
「ふざけんなよ、あんな卑怯な事しやがって....」
「“卑怯”?何の事?」
「マネージャーならわかるだろ!?アイツらがラフプレーで勝利を手に入れてるって。」
「だったら何?笛は一度でも鳴った?鳴ってないならルール違反じゃないもの。」
「!み...認めるのかよ?」
「罪はバレなきゃ罰せられない。見つからなければ罪じゃない。世界はそういう風に回ってんだ。第一バスケなんてあんな狭いコートで一つのボールを追い掛ける競技、 “必死にボールをキープしようとした選手がたまたま起こした接触事故” はよくある事でしょ?間違ってるのは貴方の方。 」
「お前、今の状況わかってんのか?」
「何?喚いて欲しかったの?泣いて許しを乞えば良かったの?優越感に浸りたかったなら人選ミスでした。この程度じゃ私は動揺しませーん。」
心身の危機に対する心の対応は中学の時嫌と言う程学んだの。結果私は腐った人間になりましたが。
「犯すっ!」
裂かれる体操服。うちの学校の指定服無駄に高いのになぁ とぼんやり考える。息を飲む男達。これは恐らく私があまりにも貧乳だったから...なんて理由では無さそうだ。胸でなく腹に集まる視線。
「犯したいなら犯せばいい。私、子供孕む事無いからヤりたい放題だよ。」
「余裕ぶってんじゃねーよ!」
振りかぶられる足。ケータイを手放して体を反転し、その勢いで立ち上がる。私の頭があった場所に叩きつけられた男の脚の脛を飛び上がって全体重を掛けて踏み付けてやった。足の裏から感じる壊れた音に快感。まずは一人目。呻きながらうずくまる男。ザマミロ。四ヶ月は松葉杖無いと歩けませんよー。
「よくもっ!」
鉄パイプで殴り掛かって来た奴の腕には踵落としを食らわせてやった。スカートだから中丸見えだけど手が使えないんだから仕方無い。同じ下着でも良いから履いておけば良かった。ついでに逆脚を再びそいつの顔面に蹴り上げローファーの裏の凹凸に鼻を引っ掛けて捻り折る。ドロリと溢れる鼻血。倒れ込んだのを確認。これで二人目。
「調子乗ってんじゃねーよ!!」
バタフライナイフを取り出した男に突進する。
「は?うわぁっ!!」
まさか向かって来るとは思っていなかったのか間抜けな声を出してナイフを振り回す。ダッサw タイミングを見計らって両手を出す。ロープが切れて自由になる。血が出たけれど想定内だ。逆にこれだけで済んで良かった。手を振って流れ出る血液を相手の目潰しに利用。出来た隙を狙って喉を突いてやる。最低でも一時間は起きないだろう。これで三人目。
「てめえ女だからって手加減してやりゃー..。」
「あんたらが勝手に私をナメてかかるからでしょ。」
一対一では勝ち目が無いと考えたのか 私を囲む残りの四人。少しこれはヤバイかも。スカートのポケットからハサミを取り出す。木吉の血も微量だが吸った事のあるハサミ、そして私のも吸った事のあるそれはお気に入りである。
「四対一、ね。ふはっ!掛かって来なよ。」
けしかければ、簡単に頭に血がのぼった様子。最初はバラバラに殴り掛かって来るから避けれたけど 長期戦に冷静になったらしくタイミングを合わせると言う事をしてきやがった。一人避けても残り三人のが当たる。その繰り返し。初めのうちは耐えれたが、朦朧とする意識と軋む体に限界を感じた。足から力が抜け 地面に倒れ込む。。押さえつけられた時、目の端に紫色を捉えた。
「暴れやがって...大人しくしろ!」
「ひッうわああァああ”ぁごめんなさいごめんなさい離してぇ」
「はぁ!?てめえ何急に態度変えてんだよ。」
「離して下さい離してだっ誰か助けて誰かァ犯されるぐらいなら死んでやる」
「ざけんな、大人しく、しろっ!」
足を無理矢理開かされる。手に掛かる力が緩んだ。
「犯す!!」
「いやあ”」
手を捻って抜き取りハサミを男の足の間に振り下ろす。四人目。もうこのハサミ使えないじゃないか。
私を押さえ付けていたと思っていた為隙だらけで、一瞬の動きについてこれなかった模様。痛みで叫ぶ事も出来ず悶える仲間の様子に固まる男達。
「あ....だからいや て い、たのに....。」
涙を零せば、
「てめえよくも!」
「犯すっっ!!」
「は〜いそこまでー。」
「「「!?」」」
急な第三者の登場に振り返る四人。と言うかもう三人に等しいか? ピロリン と間抜けな音を立てるスマホをポケットにしまい、ガムを膨らますのは原。
「お前霧崎のっぐっ」
声が途中で消える。原のエルボーが決まったらしい。両手が自由になる。五人目。
「うちの大事なマネージャーに何してくれてんのー?」
間延びした喋り方とは裏腹な機敏な動きでもう一発エルボー。六人目。
「最後のしーあげっ!」
大きく肘を振る。が 肉とぶつかった音がしない。
「来るってわかってりゃよけれんだよ。」
原の腕が掴まれていた。
「死ねよ。」
振り下ろされる腕。
ぱん。
手の平でそれを受け止め そこを軸に半円を描くように足を回して頭上に蹴りを入れる。
うん。まあまあ綺麗かな?80点くらい?
沈む男(七人目)に
「オレがエルボーしか出来ないと思ったの?」
とニヤニヤしながら言う。
「取り敢えず これ羽織っときなよ。」
差し出された手を取り、カーディガンを受け取る。
「ありがと。」
袖を通した時 視線がお腹に向けられている事に気付く。しまった....。
「それ、こいつらにつけられたの?」
「違うよ。どう見ても古傷でしょ?」
「ん、そーだね。」
もし こいつらがつけたんなら殺すトコだった。呻き声を上げて横たわる男の頭を彼は笑顔で踏み付けた。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アニメ始まる前に下書きは済んでいたので、原君の髪色は金色として書いていました。紫ショック....



[ 18/25 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -