私だけの神様

「お邪魔しまーす。」
初めて入る花宮の家に戸惑いを隠せない。病院から帰る途中「オレの家に来い」と電話がかかった。勧められてソファーに座る。花宮も距離を置いて座った。
「ご両親は?」
「家と学校が遠いから一人暮らし。」
「そう。」
私達は互いに知らない事が多いね。
「今日はどこ行ってたんだ。」
部活あったのに と言う花宮に一言。
「私 正式マネージャーじゃないんだから、毎日参加する必要ないでしょ。」
「ちゃんと答えろよ......ん?その怪我」
指さされて
「あぁ、日向に」
と反射で滑らせてしまった口を隠す。
「日向に?何されたんだよ。」
言うつもり無かったのに。
「今日、病院に行った。」
誰の為と言わなくても伝わったようだ。
「ふーん。それで?様子は?」
「あの足じゃ、高校の間はバスケ出来無いね。」
私は嘘はつかない主義だから、聞かれた事にはそのまま答えるよ。木吉の怪我は花宮の予想を遥かに越えていた。何も無い状態から部を創るほど好きな 木吉のバスケ人生を完璧に壊してしまった現実に、花宮は耐えられるだろうか。
花宮も私も 人の人生 全てを抱え込める器など無い。人生を狂わせてしまった事実を受け止めきれる精神も無い。自分を守る為に虚勢を張って 大きく見せて 周りを攻撃して、それだけ。ただそれだけなのだ。 だから良くなかった。間違ってた。花宮にとって この結果は、
「間違って無い。」
そっと花宮の腰に抱き着き 顔を埋める。本心は飲み込んで。
初めて触れる花宮の体に早まる心音。今にも崩れそうな彼を支えたかった。
「お前危機管理なってない。」
男と二人きりの状況で何やってんだよ と頭上から声が降ってくる。
「何?シたいの?」
ぎょっとしたように目を見開く花宮にゆっくりと囁く。
「まこちゃんがいいなら しよう。電気消して。真っ暗な中だったら いつでもどんな場所でもしていいから。」
その時私が求めたのは 居場所でも 彼氏と言う隠れ蓑でも無い。花宮の愛情だ。私から愛をねだった。ねだるだけで まともに愛する才能なんて無いけど。

彼に満たされ、彼の熱に溺れながら 間違って無い。間違って無い。私が支えてあげるから と呻き続ける。
花宮を否定する事は私の存在を否定する事と同意だ。世界が自分自身を守ってくれないから 悪を備えなければ生きていけないだけで...、私の様な淘汰されるべき少数派の人間がいる事を世界が認めてくれないだけで...。居場所が無かった私を 世界に擬態するしか無かった私を 本当の姿のままで 必要と傍に置いてくれた。花宮、貴方がいれば私は何でも出来る。だから 私に居場所を与えてくれた貴方を 肯定出来なくても、誰にも否定させない。
私が守る。私が傍にいてあげる。私が一緒に落ちてあげる。私が私が私が...

花宮真。私だけの神様。



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このお話を入れるかすごく悩みました。マネージャーシリーズはR指定かけたくなかったので。でも二人に既成事実をあげたかったので(直接描写ないから大丈夫ですよね)
夢ノ木ノ下デの初お色気シーン(?)が霧崎第一で満足です。

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