確かに育つ恋心





「ほら 何も笠松を傷つける物は持ってないでしょ?」
「おう。」
「どこにも隠してないでしょ?」
「おう。」
「じゃ、大丈夫だよね?」
「おおおおおう!」
只今昼休みの屋上。“KJN”(笠松の女子嫌い治そうの会)絶賛活躍中。と言っても他のメンバーは遠巻きに様子をうかがっているだけだが。
今日の目標は“手をつなぐ”だ。“目を合わせて話す”だけであれほど暴れたのに....。ハードル高いな。
「大丈夫大丈夫。怖くない怖くない。 行くよ?」
「ぉおぉう!!」
そろりと指を伸ばす。目を白黒させて「あー」とか「うー」とか言ってる姿に笑いが漏れそうになったが必死に堪える。あと数センチと言うところで、
「ううぅううぉあぁあ〜っやっぱ無理ぃいいぃ!!」
「痛い!!」
手を叩かれた。脱兎のごとく逃げ出される。
「いたたた....笠松大丈夫?」
「うおおオレはだい大丈夫だ。そ、それよりお前は?手加減したつもりだけど....」
不安そうにこちらを見る。前私が怒って“KJN”を放棄しかけた事がよっぽど怖かったらしい。
「ん、平気。」
「うぅう ごめん。ごめんなぁ....」
「大丈夫大丈夫。笠松は悪くない。笠松は悪くない。私は何もしない。大丈夫大丈夫....落ち着いた?」
「....おう、 お、ち、ついてきた....ん、大丈夫だ。」
「そうよかった。あ、私次から訓練 休みの日にしか手伝えないから。」
「はへ?」
できれば毎日したい所だ。けどIHも近づいてきて、仕事が増えた。昼休みも他校のデータまとめをしなければならないし、何より二年生でスタメンに選ばれた笠松の練習時間を削る訳にはいかない。そう考えると休みの日に訓練を行うのが一番だろう。
「じゃ、私次移動だから先行く。」
「ふぇ?お、あぅ まっまっまっ」
「どした?待つから落ち着こうか?」
手をわたわた振り回す笠松を見る“お前じゃなきゃ駄目”宣言をされてから、どこまでも笠松のテンポに合わせようと心に決めた。
「やっやっやっまっやっ」
「笠松、深呼吸深呼吸。」
「まっあっしんこっきゅっひっひっふー」
「それは深呼吸じゃないよ」
「うぇっ?あぁ、....あぁ....うあああああ!」
「ええええーちょっ泣くな泣くな。」
どうしてこんなに精神不安定なのー!顔を除き込んで大丈夫大丈夫となだめすかす。ほら、目を合わせて話してもいけるようになったんだから。
「笠松泣かないで」
「嫌だあぁあああ」
「うんうん。何が嫌なのか教えてよ。」
「オレ椎名じゃないと駄目だ。椎名と離れたくないー。」
....それはどういう意味なんだ?うぬぼれてもいいのか?勘違いしちゃうだろ バカ。
身振りで他のやつに先に戻ってと促す。予鈴を聞きながら、次の移動授業は遅れてしまうな と覚悟を決めた。


少しずつ でも確かに育つ恋心は根を張りやがて芽吹いて行く。




[ 6/15 ]

[*prev] [next#]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -