天然ドS





「よし!まずは半径50cmに近づいてみようか?」
さりげなく手を掴もうとした森山の手をはたく。
「OK」
一歩踏み出したら笠松はズザザッと後ろにさがった。
一歩踏み出す。さがる。出る。さがる。出る。さがる。の繰り返し。
「笠松がさがったら意味ないぞ?」
小堀が諭す。
「う”っだけど....」
「私の何がいけないの?」
「オ、オマエガダメナンジャナクテ、ジョッ ジョシガニガテナダケダ」
「笠松先輩 片言酷すぎますよ。早川なみに何言ってるかわかりません。」
「う....うるさいっ!」
今や耳まで赤くなっている笠松。
「別に片言なのは良いよ。だけど話すとき全力で顔背けられるのは気分わるい」
会話するときくらいこっち見ろ と笠松の視線の先へ回り込む。
「ウワアァー!!コッチクンナ!!」
今や首まで赤くなっている笠松。
「私は化物か何かか?」
「ジョシトイウナノ バッバケモノダ!!」
「こっち見なさいよ!」
「ムリムリムリムリムリムリムリムリムリ」
笠松の半径50cm〜1mをぐるぐる回りながら視線を合わせようと試みる。
「おぉ....これは見ていておもしろいな」と声を弾ませる森山は後でシバいておこう。
「頑張(れ)笠松先輩!!」
天使早川、私も応援してくれ。


「はぁっはぁっ」
「〜〜〜はぁ..」
数分に渡る攻防の末 ついに笠松は私を見た。と言っても視線は合わない。よくて口元まで、だ。
「そ、それでもすごい進歩じゃん。」
ゼーハーと息を整えながら笠松の肩を叩こうとすれば、猫のように素早くよけられた。さすが海常バスケ部二年レギュラー。あれくらいの運動(?)じゃ動きは鈍らないか。
「よかったな、笠松。椎名とまともに話せるようになって」
いやいや小堀。今軽いスキンシップ取ろうとして逃げられたばかりですが?
「すごいっす。オ(レ)感動しました!」
どこに感動する余地があった?早川。
「今の動画、結構ネタになりそうです。」
中村、お前いつの間にそんなもの撮ってんだ!?
「....笠松の女子嫌いを治そうとする→仲間思い→森山君って優しい→女子にモテモテに」
「森山ァ お前はその残念な思考回路をどうにかしろ!!」
「痛っ!知春ちゃん!中村もヒドイ事やってるぞ?」
「お前の言動はなんかイラッとするし、あと中村は絡みにくいんだよ」
「理不尽!!」
ギャーギャー騒いでると
「おいっ」
と声をかけられた。やばい、遊ぶなって注意される?全員で身を竦ませると
「早川ー、中村ー、悪い。今ヒマだったらコレ運ぶの手伝ってくれ。」
大きな荷物を抱えた一年生が二人を呼んだ。
「あぁ、わかっ「わ(る)い!今オ(レ)たち笠松先輩の女子ぎ(ら)い治そうの会活躍中だか(ら)手伝えないっ」
はぁ?と目を丸くする一年生。
「ごめん。無視して。私がそれ運ぶから」手伝いに行こうとすれば
「椎名先輩が抜けたら意味ありません。オレたちが行きますから続けてください」と止められた。
「中村....顔に“もう飽きた”って書いてるけど」
「そうですか?」
「そうですよ!」
「ま、続けてください。」
行くぞ、早川。と中村が天使を引っ張って行く。
「笠松先パーイ頑張って下さい!!」
だから私も応援してくれって....

「続けようか?」
小堀の笑顔にこくりとうなづく三人。
「次はどうしよう?」
「会話の次はボディタッチだろ?」
「「死ねっ!森山ァ!」」
森山の背中に私以外の蹴りが同時に入り、
「あ。うつった。」
と笠松がぽつりとつぶやく。
ぬおぉおおぉあ と意味ない声を発する森山を少し哀れに思う。
「冗談抜きで触れ合いの訓練は必要だと思うぞ?」
小堀....森山を無視するスキルついたんだね。
「んー 確かに。ちょっとかすっただけで“ヒャー”とか言われてめんどいし」
「ヒャートカイッテナイダロ」
「いや、言ってる言ってる」
「じゃあまずは、“手を握る”から」
笑顔で爆弾投下するね。
「無理だっつーのーー!!」
笠松の悲鳴が響き渡る。


小堀って実は天然ドSなんじゃないかと思う今日この頃



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