弱い虫





「はぁ!?バスケ部を辞める!?」
「ああ」
笠松のこの目を私は知ってる。固く決意した瞳だ。
「ど、どうして?」
「どれだけお前がオレのをかばってくれても、あの試合負けたのはオレのせいって事には変わりない」
「それが何?」
「責任を持って辞めようと思う」
「....」
IHが終わり、WCに向け練習に励もうと言う雰囲気の中、笠松はいきなり私にそう告げた。
「椎名には伝えておこうと思って」
「....どうして笠松が辞める必要性があるの?」
「責任は取らないと」
「それは責任を取ってるわけじゃない!逃げてるだけだ!!」
急に声を荒らげた私に驚いたように目を開く。が、すぐにすっと細めて背けられた。
「オレ、考えて決めた事だから。」
そのまま背を向け歩き出す。監督の所へ行くのだろうか?
「笠松の事尊敬してたのに!!」
ピクリと肩が揺れ、
「そんな笠松私嫌い!!」
彼は弾かれたように走り出した。
「笠松の臆病者!!」
分かり合えたと仲良くなれたと思っていたのに、私は彼の役に立ててない。悔しかった。臆病者は誰だ?私だ。
「う”うーっ」
顔を覆いしゃがみこむ。鼻の奥がツキンと痛んだ。

「椎名か?何をしている?」
「監督....」
顔を上げると監督が私を心配そうに見おろしていた。私は笠松がこの前の試合のミスの責任を取ろうとバスケ部を辞めようとしている事、でもそれは間違っていると思う事を監督にまくし立てた。

「....そうか」
「すみません。私何かが意見して」
「いや、ワシもそう思う。」
そこで監督は一つ息をつく。
「椎名が正式なマネージャーで無いと言うのは惜しいな」
「あ、え?...その」
「いや 構わん。休みの日まで出てきてもらってすまんな。サポートに戻ってくれ」
「はい...」



弱い虫




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