まだ先の模様





涙と鼻水にまみれた互いの顔を見て同時に吹き出す。
「はい、タオル」
「おう」
なんだか離れ難くて笠松の背中に腕を回したままだけど、パニックになられたら困るので腕を外す。一歩さがろうとすれば、腰を引き寄せられ、もう一度顔を肩に埋められる。
「かかか笠松?!」
どういうことだ?今まで毛布越しでしか触れなかったのに!!
「椎名」
「ふわぁい!」
低い声でささやかれ 戸惑ってしまう。私の中の笠松のイメージ声は 慌ててたり、テンパってたり、裏返ってたりだから新鮮すぎてドキドキしてしまった。その低い声のまま笠松は続ける。
「椎名...オレ、椎名の事...」
「おっめでとー!!」
底抜けに明るい声に二人でビクッと体を震わす。声の方を見れば、森山と小堀がいた。声の主は森山か?
「おめでとう笠松。自分から女の子に触れるなんて進歩じゃん♪」
「良かったな。記録つけないと...」
小堀が鞄から“KJNノート”と大きく書かれたノートを引っ張り出す。
「小堀。それいつからつけてんの?」
「最初からだが?」
「嘘!?ちょっと私にも参加させなさいよ。」

私が一番貢献してるんだから!と小堀の元へ駆け寄る。笠松は空中に手をさまよわせ、呆然としていた。肩を叩かれ我に返る。ニヤニヤしながら、
「抜けがけ禁止☆」
とウインク付きで言ってきた森山の背中に足を振り下ろす。

「邪魔すんじゃねーよ!!!」


花開くのはまだ先の模様



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