イ
久しぶりに受けた授業。昼休みが終わり、教室に戻って来たあの子はほんの少しだけれど目を赤く腫らしていた。声も掛けれずこっそり横目で様子を伺うしか出来ないボクは何がこの子を悲しませているのかわからない。けれど、今この子の中を埋めているのはボクじゃない。
(昼休みに何があったの?)
ボクの気分は急降下だ。
夜時間の放送が入り、しばらくして自室の冷蔵庫に飲み物がなくなっていると気付いた。無いとわかると何故か喉が渇く。確かコインランドリーに自動販売機が入っていたはずだ。財布をポケットに入れてボクは自室を出た。
ランドリーで少し腰を落ち着ける。買ったばかりのブルーラムを飲みながら、ぼうっと外を眺めているとすりガラスの扉越しにあの子が通り過ぎた。
(こんな時間にどこへ?)
迷いなく真っ直ぐ進む足取りは食堂も大浴場も無視してそのまま寄宿舎から出て行った。夜時間に校舎への侵入は禁止なのに、ボクも人のことは言えないけれど。あの子をボクの幸運に巻き込まないため、入り組んだ造りの校舎は格好の隠れ場所だから。
「……」
歓迎会を断ってまで向かわなくちゃいけない場所ってどこなんだろう。ボクは迷わず後を追いかけた。
(娯楽室に何があるんだろう?)
あの子が入った扉をこっそり覗く。
(!?消えた?)
つけているのを気づかれないよう時間差があったとしても出口は1つしかないのにどこに行ったのだろう。
カタリ
小さな音が聞こえたので目を向ければロッカーの扉がカタカタと揺れてから閉まった。
(ロッカーに隠れて何をやってるの?)
訳がわからず混乱していると背後に誰かの気配。詳しく言うと背後に誰かが飛び降りて来た。
「え!!?」
振り返ったけれど視界を埋め尽くす黒と首からの衝撃に、ボクは意識を飛ばした。
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