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スマホの画面をのぞき込み、増えていない受信ボックスにため息を1つ。ずっと心配してたんだ。日向クンから返信が来なくなってどれくらいたっただろう。本科に編入してから最低一日一通のやりとりを交わしていたのに、パタリと途絶えてしまった。近況報告や凪斗への想いの吐露。日向クンの悩みも聞いてあげれるようになって私も頼りになるんだとうれしかったのに。
『俺は絶対本科に行く。待ってろよ』
が最後のメール。そこからどんなにメールを送っても、電話を掛けても応答はなかった。
(もしかして嫌われちゃったのかな)
日向クンならいつまでも味方でいてくれると思ってたけれどそんなの私のただの身勝手だ。もう、返事もしたくないほど私が嫌いになったのかもしれない。それでも、今までの感謝の気持ちを伝えたくて、昼休みを利用して日向クンに会いに来た。元、私のクラスの扉を開ける。
「あれ…日向クン?」
私の机がなくなっているのはわかる。でも、なぜ日向クンの席までないの?近くにいたクラスメイトに尋ねてみる。
「あ、あの。日向クンどこにいますか?」
「おう、亜神田木久しぶりだな。日向?あー知らね。いつの間にかいなくなっちまった。きっとこの学園に絶望して退学したんだろ」
「う、うそ…」
信じられない。私はそのまま職員室に走った。
「せっ、先生、お久しぶりです」
「亜神田木じゃないか。どうだ、元気にやってるか?」
「はい…あ、あの、日向クンは…日向クンは今どうしているかわかりますか?」
先生は笑顔のまま視線を泳がせた。
「日向…か。あー日向な…先生詳しい事はわからないんだ。すまない」
「が、学園を退学したんですか?」
「亜神田木、先生これから少し用事があるんだ。悪いな」
とぼとぼと本科に戻りながら考える。信じられないけれど本当に日向クンは希望ヶ峰学園を退学したのかもしれない。でも、何故かとてつもない事に巻き込まれている気がする。
もう、2度と日向クンには会えない。それは確信を持てた。
誰よりも希望ヶ峰学園に憧れて、才能のため努力して、胸を、張れる自分になりたいと頑張っていた日向クン。
優しくて思いやりがあってお人好しで一緒にいるだけで心が穏やかになれた日向クン。
傷だらけで醜い私を綺麗だと好きになってくれた日向クン。
涙が止まらない。泣きながら歩く私に好奇の視線を向ける周囲を気にすることもせずに、ずっと嗚咽を漏らし続けた。
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