「凪斗ーおはよう!大好きー!!」
「鬱陶しいよ」

僕を見掛けるなり子犬みたいに駆け寄って来るあの子を躱す。

「ごめんね凪斗。昨日大好きを言えなくて」
「一日一回言うって勝手に決めたのは元予備学科でしょ」

昨日ボクの部屋(の前)に来なかったから何かあったのかと思って食堂に来てみれば、いつもと変わらない姿だったから胸をなでおろした。

「狛枝!巴ちゃんは元予備学科って名前じゃないでしょ。ちゃんと呼びなさいよ」
「いくら小泉さんの注意でも聞けないなぁ。ボクは絶対に認めないから」
「いい加減怒るよ!」
「小泉さん、落ち着いてください。亜神田木さんに大切なお話があるのでしょう?」
「あ、そうだっ」

ソニアさんの言葉に小泉さんはこちらに乗り出していた身体をあの子の方に向ける。

「ねぇねぇ巴ちゃん。今日歓迎パーティーやろうと思うんだけど、どうかな?」
「か、歓迎?誰のですか?」
「そんなのアンタに決まってんじゃーん。態となの?もしそうだとしたらうざいんですけどー」
「本当は編入初日にやろうと思ってたんスけどいろいろあって今日に決めたっス。お昼休みを利用して男子禁制の百合百合なパーティーにするッスよー!!」
「あ…ごめんなさい。お昼休みは無理です」
「そうか、では夜時間ならどうだ?元々昼休み、夜時間を通して行う予定だったからな」
「ほ、本当にごめんなさい。夜も駄目です」
「はぁ!?じゃー菓子パーティーはどうなんだよ!オレすっげー楽しみにしてたのによー!」
「あのあの…どうして駄目なんですかぁ?もしかして私がいるから嫌なんですかぁ?うざくてすみませえぇん」
「ち、違います!えっと、あの…」

皆に詰め寄られて縮こまるあの子に声を掛ける。

「一日一回の面倒臭い行為は終わったんだからボクはもう、追いかけっこに付き合わないよ」
「違うよ凪斗。そうじゃなくて」

ボクのためじゃなかったのか。思い上がりに少し顔が熱くなる。

「あー亜神田木。こっち来い」

左右田クンがあの子を呼び寄せて耳打ちをした。

「ううん、違うよ」
「えっまじで、うわー恥ずいぜ…でもよーもう差し入れいらねぇぜ。大変だろ?」
「そんな事ないよ。毎日楽しんでるもん。あ、後でお弁当渡すね」
「それならいいけどよぉ」
「ちょっとモブ男。割り込まないでよね。アンタもわたし達の誘い断る理由はっきり言いなさいよ!」
「えぇっと…今日は両親と連絡を取る日なんです。明日のお昼なら大丈夫ですので…そ、その、変えてもらえますか?」
「そうですか、ご両親は大切になさってくださいね」
「案ずるな、一日ずらすぐらいどうと言う事はない」
「ええ!?明日ぁ!?なんでだよー。菓子食いてーよー」
「わ、私のせいじゃないんですね。よかったですぅ」
「うげげっ唯吹の仕掛けた罠もう1度仕込み直しっスか?」
「今、なんだか不穏な単語が聞こえたんだけど」
「テヘリン☆」

皆それぞれ納得しているけどボクはあの子の言葉が嘘だとわかった。

(君が両親と連絡?有り得ないね)

でも、あの子が嘘をついてまで人の好意を断るなんて、何があるのだろう?不審に思っているとあの子はスマホを取り出して何かを確認してから深くため息をついた。
あの中にボクの番号はない。なら誰?あの子の心を暗くさせるのは何?

尋ねることも出来ないまま、朝食の時間は終わりを告げた。




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