真っ暗な廊下を駆け抜ける。非常灯しか照らされていない校舎を走り回る事が出来るくらい、位置把握は完璧だ。初めはどこに何の教室があるか覚えるので精一杯だったのに。

「それもこれも凪斗が私から逃げるせいだもん!」

凪斗は私が編入した初日から一度も授業にすら出ていない。希望ヶ峰学園の授業制度は特殊で、才能を伸ばせば参加の強制はないらしい。その制度を利用して凪斗は私から逃げている。

「まだ今日の分の大好きを伝えてないよ。凪斗ー!!どこに隠れてるのよー!」

美術室の前に何故か整然と並ぶ電信柱によじ登り、警備員の見回りをやり過ごす。足元を通り過ぎるのを見届けて「よっと」の掛け声と共に飛び降りた。巡回時間も経路も覚えてしまった。あのまま下へ降りてしばらくはこちらに戻って来る事はない。さすがにもう部屋に帰ってるだろうか?ただでさえ凪斗はかくれんぼや鬼ごっこ、強いのに プラス幸運も持ち合わせてるのだから、本気で逃げられたら見つけるなんて出来ない。

「今日も扉越しに大好きって言うパターンか……ん?」

目の端を一瞬ちらついた黒い影に顔を上げる。耳を澄ませばカツカツと小さな足音。

「………凪斗?」

逡巡してその影を追い掛けた。




閉まったばかりのSFチックな円柱型の扉の前で立ち止まる。先程の影はこの物理室に入って行った。謎の緊張感に包まれる。ゆっくりと開けて、隙間から覗き込めば宙にぶら下がった足が天井の大きく開いた丸い穴に吸い込まれるように消えて行った。

(ん?えっ?)

慌てて教室に入る。穴の下まで行っても何も見えない。微かに鉄板を踏みしめるような音が聞こえてくるだけ。ぐるりと見渡しもう1度見上げて、空中にせり出された通路を見つける。あそこから飛んで中に入ったのだろうか?中途半端な所で途切れているあの通路は空洞の中に入るための物?

「よぉっし」

意気込んでハシゴを登る。下から見上げた時はわからなかったけれど天井の穴まで距離があるし、意外と高い。でも、躊躇ってる暇はない。こうしている間も凪斗との距離は開いてしまう。(さっきの影は凪斗だと決めた)

軽く屈伸運動をし、私はその穴目掛けて飛び上がった。



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