愛の形なんだよ
名前を呼んではいけない。触れるなんて論外。あの子に関わって少しでも幸運だと思えばそれを打ち消す不運がやって来る。その不運のせいであの子はボクに縛られる。
だから、突き放す為に冷たく接して来た。あの子に酷い言葉を放つのはボクにとって最高の不運だけど、それで守られるのなら、ボクに扱う事の出来ないこの死神のような才能があの子に向かないのなら、良かったんだ。
薄く開いた目に見慣れた天井と、ここにいるはずのない人たちの顔が映る。
「はわわぁ〜、狛枝さんやっと目が覚めたんですねぇ」
「全くもう、心配かけさせないでしゃきっとしなさいよ、男子でしょ?」
「オメーちゃんと飯食えよ?軽すぎてビビったぜ」
「凪斗ちゃん生き返ってくれて良かったッスー!!」
「いや、まず死んではいないぞ。狛枝痛む所はないか?お前を落ち着ける為に手荒な真似をしてしまった。すまない」
「罪木さん、小泉さん、終里さん、澪田さん、辺古山さん?どうして皆がボクなんかの部屋にいるの?」
痛むみぞおちに顔をしかめながら起き上がったボクの背に罪木さんはすかさず枕を挟んだ。さすが超高校級の保健委員さんだね。
絶望のくせに。「狛枝、あれほど取り乱しておきながら私たちが心配しないとでも思っているのか?」
「なるほど、あの子が怪我した不運とあの子に抱き締められた幸運じゃ割に合わないと思ってたけど、皆がボクごときを心配してくれる幸運もついてくるから「もういいッスよ。ここには唯吹たちしかいないんすから」
「絶望的にだりぃ話し方止めろ。本題をさっさと話せ」
それなら君たちもだよ。とは言わず、心の中で止めておく。
「ボクと元予備学科の関係が知りたいんだね。いいよ、まずボクらは幼馴染み。これは元予備学科の言った通り。加えて、親戚なんだ」
「…巴ちゃん、誰かに似てると思ってたんスけど…そっか、凪斗ちゃんと顔立ちが似てるッスね。黒髪だから気づかなかったッス」
ボクの言葉に小泉さんはひらめいたように人差し指を立てる。
「じゃあ昨日のリボンは…」
「さすが小泉さん。理解がはやいね」
「り、リボンってなんですかぁ?」
「わからないなら黙ってて」
「ふええぇすみませぇん」
「つ、つまりあんたの好きな子って」
「うん、元予備学科だよ」
「ならどうしてつき合わないの?どう見たって巴ちゃんと両想いだったじゃない!」
「“つき合わない” じゃなくて “つき合えない” だよ」
「む?どう言う意味だ?」
自虐的に笑ってボクは希望の象徴と言われていた彼女達を見回す。
「ボクの才能忘れちゃった?」
◇◆
薄く開いた目に見慣れない真っ白な枕とシーツが映る。どうしてうつ伏せで寝ているのだろう。ゆっくりと身を起こせば背中のチクチクとした痛みと薬品の匂いに先程の出来事を思い出す。
「目覚めたか、新入生よ」
声の方を向けば右目に赤いカラーコンタクトと左手に包帯を何重にも巻いた男の子が壁に背を預けて立っていた。
「あ、あの…「我が名は田中眼蛇夢。いずれ世界の全てを支配する男の名だ。覚えておいて「うっせうっせ!てめーはただの飼育委員だろうが!」左右田クン」
白いカーテンを開けながら入って来た彼に説明を求める。田中クンだと話が進まなさそうだし。
「狛枝を庇って怪我したのは覚えてっか?」
「うん」
「で、病院に連れて行くかって話になったんだが、希望ヶ峰の設備でも充分治療出来るって事になって今ここ保健室。OK?」
「うん、簡潔にありがとう」
いつもよりクリアに聞こえる声を不思議に思って、ふと耳に手をやる。直に触れた傷跡に失せる血の気。
「あーそれと、これ、血で汚れちまったから洗ってやっ「触るなぁ!!」うおぉ!」
左右田クンがかかげたそれは凪斗からの贈物のヘアバンド。ベッドから飛び降り、痛む背中を無視して奪い取る。伸ばした手は手袋もリストバンドもしてなくて、床に触れた足はリノリウムの冷たさを直に伝える。
「!!?」
私の傷を隠していたものがなくなっていると知り、地べたに丸まる。そっと視線を上げれば、驚いた顔をした2人と目が合った。気まずくてうつむく。
「なぁ、亜神田木。教えてくんねぇか。お前と狛枝ってどんな関係なんだよ」
左右田クンの言葉に思わず肩を揺らす。
「あの優男が幼少からの知人が傷ついただけで、あれほど取り乱すとは、どう言う因果か。お前のその細身に刻まれた禍々しき無数の傷と関係があるのか教えてみろ」
やっぱり見られていたのか。ならこんな所にしゃがんでいても仕方ない。ゆっくりとベッドに戻り、ヘアバンドで耳の傷を覆い隠し、息をついた。
「確かにこの傷は凪斗のせいだけど凪斗がやったんじゃないよ」
「何を言ってるのかわからんぞ新入生」
「オメーが言うか」
苦笑いしながら2人を見回す。
「凪斗の才能忘れちゃった?」
somebody to loveでの席順
罪〇夢狛
澪田ソ左
小詐終弐
西花辺九
アニメ絶望編での席順
辺弐七〇
九終詐澪
罪狛小花
田ソ左西
- 20 -[←] | [→]
[
BACK]