すれ違って

解放されたのは結局昼休みも終わりかけのころだった。左右田クンにはメールで行けないことを伝え、途中の自販機で紙パックのジュースを2本買い教室に戻る。凪斗には連絡手段がない。扉を開ければ目の前が白で埋め尽くされた。それが日向クンのワイシャツだと気付いた時に「無事でよかった!!」の声が降って来て、日向クンの腕の中にいるとわかり顔が熱くなる。

「日向クン、近いよ!」
「メールの返信が1回しか来なかったから心配したんだぞ!?何があったんだ!?」
「わかった!教えるから放して、少し苦しい」
「わ、悪い」

解放され赤くなった顔をごまかすように扇ぐ。 紙パックのジュースを1本渡して 椅子を日向クンの方に向ける。いつも通りの昼休みだ。違うのは今から話す内容。





話した。
本科へ編入を持ちかけられたこと。その条件。怪我のことも全部。いや、全部と言うのは嘘だ。怪我の理由と、本科の先生達の予備学科に対する考えは、日向クンには言えなかった。日向クンの希望ヶ峰学園に対する憧れの大きさを知っているから。
「亜神田木はその話、受けるのか?」
「ん、そのつもりだったけど…」

意志が固まらず視線をさまよわす。誓約書まで書いたのに何を迷ってるんだ。

「俺の事は気にするな。直ぐに本科に行ってやるから」

応援するから笑え。と頬を挟まれて、こへじゃ わらへにゃひよー と抗議する。そうだ。私は日向クンの笑顔と後押しが欲しかっただけ。





この時、本科への編入を断ると決意していたら、少しは良い方向に向かっていたのだろうか。



- 13 -
[] | []

[BACK]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -