両手に持つジェラートを落とさないよう慎重に運ぶ。女子しかいない列からやっと抜け出せた。180越えの男子が一人ジェラート屋に並ぶなんて好奇の対象にはなるだろうが、あからさま過ぎる視線に内心舌を打つ。木陰のベンチに腰掛け、足をパタパタと揺らしていた真実が歩いてくるオレを見つけると向日葵のような笑顔を見せた。苛立ちが消えていく。
真実も一緒に並ぶと言ったが炎天下の中あの行列に並ばせるのは気が引けてここで待つように言い聞かせた。

「ありがとうございます。いくらですか?」
「こういうときは黙って奢られてろ」
「でも」
「溶けるぞ」
「は、はい!」
味の指定は無かった と言うより「康次郎君の選んだものが食べたいです!」と言われたのでレモンとミルクの二種類にした。
ただ単に色で決めた安置なイメージ。
(喜んでるならいいか)
「康次郎君は何にしたんですか?」
「抹茶だ」
甘いのは嫌いではないが多くは食べれないので一つだけ。
「あ、康次郎君ぽいです」
「オレっぽいとは何だ?」
「和風男子?」
「分からないな」
「抹茶味おいしいですか?」
「ああ、食べるか?」
口元に差し出せばまじまじと見つめられた。
「?いらないのか?」
「た、食べます!」
恐る恐る頬を赤らめて食べる姿に やっぱり炎天下の中並ばせなくてよかったな、と思った。



「おいしかったです。ありがとうございました」
「よかった」
食べ終わりくるくる回りながら歩く真実の髪にピンを挿す。そのピンには先程の向日葵畑で摘んだ向日葵をつけている。(オレがピンを持っているのは右側の髪が崩れたときのためである)
「どうしたんですか?」
急に髪に触れたオレを見上げる真実に
「ゴミがついていた」
と嘘をつく。
「取ってくれたんですか。ありがとうございます」
「ああ」(普通気付くだろ バカ)
「噴水です!」
「ああ」
「入ろっと」
「ああ...ってはぁ!?」
慌て見やれば靴を履いたまま本当に噴水の中に入っていた。
「うわぁ冷たい」
「何やってるんだ」
「大丈夫ですよ。こんなに天気が良ければすぐ乾きます」
「そういう問題では無いんだが」
「ほら」
「うっ」
頭から降ってきた水に反応できず、そのままかぶってしまう。ポタポタと前髪から滴る水滴やじわりと服が肌に張り付く感覚に顔を歪め文句を言おうと口を開いたとき
「うふふーこんなに冷たいの初めてです」
白い歯を見せてこちらに笑いかける真実に毒気を抜かれ、ため息をついた。
「初めて?海やプールとか行ったことないのか?」
「あ、確かに海も冷たいですねー」
キラキラ反射して綺麗! と水面を蹴りながら向日葵を揺らす姿に目を細める。

真実の見る世界は全て輝いているような気がした。オレもそのように観てみたい――とは柄にもなくて言えやしないが。
「コラーそこは立ち入り禁止だ!!」
警備員の野太い声に真実の手を掴む。
「逃げるぞ!」
「え?」
オレの手にすっぽりと収まってしまうくらい小さくて温かな手を強く握って走り出す。


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