交渉

「なんや若松。相談って」
学年末テストが終わったバスケ部の部室。今吉は若松にチラと視線を送る。
「テスト欠って進級できひんとか そういう相談は乗られへんで」
「欠ってません。ギリ全教科平均点超えました! 今吉さんマネージャーが欲しいって言ってたじゃないすか?」
「おん」
「いい奴がいるんですけど」
「ふーん。女?」
「はい」
「彼女?」
「ちっ違いますよ」
「ほな…」
ずい と若松に近寄り
「好きなやつや」
と唇の端を釣り上げる。
「ち、ちち違います!!」
必死に否定する若松だが顔の赤さが信憑性をなくす。アカンわ、こいつわっかりやす。若松から離れ 真剣味を帯びた声で言う。
「ウチはなぁなぁでやっとるワケやないからな。マネージャーは真面目なやつやないと困るんや」
「大丈夫です!あいつ超マジメです!ボタン第一までとめてるし」
「それはマネージャー業務と関係ないやろ?」
「サポート能力ありますよ、絶対!だってオレを平均点まで上げてくれたし」
確かに赤点常習者の若松をそこまで引き上げたのなら 頭はいいだろうし、分析力に長けているだろう。それに根気も。
「なんてったってこのアホをここまで教え込んだ。」
「はい?」
「いや、別に。 よしその子にやる気あるんやったら来てもらおか?監督にはワシから言うとく」
「アザッス!!」
勢いよく頭を下げてから着替えるためロッカーを開ける。その扉の内側に貼られている紙に今吉は目を止める。
「なァ 前から気になっとったんやけどそれ何?」
「ああ コレすか?」
今吉にも見えやすいよう扉を大きく開ける。
「全教科平均点越え」
「全国制覇」
と書かれた2枚の紙。
「西川って言うんっすけど、オレそいつの字が好きで やる気出すために書いてもらったんス」
「へーえ」
確かに若松が好みそうな勢いのある字だ。(きっと豪快な女なんやろうな。)
若松の想い人である西川を想像しながら 今吉は許可を得るため監督の元に向かった。




 
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