私は馬鹿だ。体育館裏に呼び出されたと言えば告白しかありえないのに。
「好きです。付き合って下さい!」
どうしよう。この状況。あ、ちなみに私が告白の当事者ではない。ただ現場に居合わせただけ。

昼休み、監督に頼まれて一年レギュラーに配ってくれと渡されたプリント。コタ、レオちゃん、永吉は一年生にしてレギュラーなのだ。すごい....。コタは同じクラスだから すぐに渡せた。永吉は食堂で牛丼をものすごい勢いで食べているのを見つけた。(いつも思うけどあの量はありえない)けれど、レオちゃんが見つからない。同じクラスの人に聞いてみると
「実渕なら女子に体育館裏に呼び出されてたぞ」
と教えてもらった。そこで気づかなかった私は馬鹿。一年生ながら強豪洛山のレギュラー。各試合では大活躍。物腰も柔らかで美人なレオちゃんに 女子のファンが多いと知ってたのに!レオちゃんが男の子だと失念していた。本当に馬鹿だ。そしてレオちゃんが告白を受ける現場に居合わせてしまったのである。

「ごめん。バスケ一筋でやっていきたいから」
「練習の邪魔になるようなことはしません。応援してます。実渕君の真面目にバスケに取り組む姿が大好きだから」
「さっきの取り消し。あ、いや 取り消しと言うよりさっきの話にプラスで好きな人がいるんだ」
なにぃー!!レオちゃんに好きな人おぉ!?知らないぞ
「そうですか....付き合っているんですか?」
「ううん。片想い。」
「....」
「でも、諦めるつもりはないから 君の気持ちには応えられない」
頭が混乱してついていけない。
「ありがとうございました」
駆けてく女の子の背中を見送る。
「旭ちゃん 覗き見は趣味悪いわよ?」
「レオちゃん!!」
見上げると告白を受けてた張本人がこちらを見下ろしていた。
「アラ?連絡のプリント持って来てくれたの?」
「そう。レオちゃんが体育館裏に呼び出されたってクラスの人に教えてもらったとき 告白だって気づけば良かったんだけど」
プリントを渡しながら居合わせてしまった説明をする。
「ふーん 嫉妬して追いかけてくれた訳じゃないのね」
「どうして?そんなことしないよ」
「ヤダ、そんなに否定されると傷ついちゃう」
八の字に眉を下げる 憂い顔がそこら辺の女性より色っぽいのはどういう事ですかー。
「意外だな。レオちゃんが告白されるなんて」
「ちょっと旭ちゃんさっきからの話しぶり見てると私の事 男って認識してないでしょ」
「え”っ!?」
「あ、図星?結構告白されるのよ。私」
「へーえ」
「告白と言えば小太郎も多いわね」
「は?あいつが?」
信じられない。あのうざい猫犬が?
「そーよ。テンション高いし、誰とでもすぐなじむし、友情から恋愛感情にシフトされちゃう子が多いのよね」
「....ふーん....」
なんなんだろう。このモヤモヤは。永吉にお礼だと無理矢理食べさせられた牛丼のせい?
「旭ちゃん、私のときと反応が違う」「へ?」
顔を上げるとレオちゃんの長い指に固定された。
「小太郎には嫉妬するんだ」
「ちっちが」
「違わないだろ?」
「レレレレオちゃん顔近いよ」
「いつもこの距離で話してるよ」
するりと髪から顔の輪郭をなぞるように指が滑る。長い睫毛の一本一本 揺れる様子がくっきり見える。私に合わせ体を屈めたとき肩から流れ落ちる黒髪からユニセックスな香りがした。心臓が苦しい。逃げようと体をよじると、
「だぁめ。逃げないで ちゃんと見て。オレの事は見ていたいんでしょ?」
広い胸の中に包まれ低い声でささやかれる。吐息が耳にかかり、背筋がぞわりとした。
「今のレオちゃんはイヤ!!」
思わず突き飛ばすと
「おっと」
と後ろに倒してしまった。
「ご、ごめんレオちゃん!」
「おてんばさんね。そう来ると思わなかったわ」
ホコリをはたきながら立ち上がり、私の背後に視線を向ける。
「どうしたの?」
視線を追うように振り返ると数人の女の子たちが走って行くのが見えた。
「アラやだ 見られちゃったわね」
「“見られちゃったわね”って何でそんなに軽いテンションで言っちゃうの!?」
「どうしてそんなに慌てるのかしら?私とうわさになるのイヤ?それとも小太郎に知られるのが」
「レオちゃんとうわさになるのがイヤに決まってるじゃん!」
「え?」
髪を整えていた手が止まり、私をまじまじと見つめる。それに負けじと見つめ返す。
「そ、そうなの...私そんなに嫌われ「レオちゃんの好きな人に間違った話が伝わっちゃう!!」
「はぁ?」
「ごめん。悪いとは思ってたんだけどさっきの話 全部聞いちゃって、レオちゃんに好きな人がいるのも...その...ごめんなさい」
「な、なんだ そういうことね」
ズルズルと再び座り込むレオちゃんに
「大丈夫 誰にも言わないから。むしろ応援するよ」
と肩を叩く。
「あれだけやったのに自覚しないって...ハー...」
「レオちゃん?」
「なんでもないわ。この恋は長期戦で行くしかないって決意してたの」
「そっか、頑張って」
「旭ちゃんに応援されたら頑張るしかないわね」
困ったように微笑んだ。



「好き」恋愛矢印の先はまだ定まっていません。




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