千夜を食べた。一秒でも離れたく無いから食べた。今、千夜は僕の中にいる。そう思うと とても満足だった。

次の日 千夜と一緒に学校へ行くため、いつもの待ち合わせ場所でずっと来るのを待ち続けた。でも、千夜は来なかった。当り前だ。千夜は僕の中にいるのだから。お陰で遅刻してしまった。

昼休み 千夜と昼食を食べようとメールを送った。本鈴が鳴っても千夜からの返信は無かった。当り前だ。千夜は僕の中にいるのだから。お陰で五限を遅刻し、昼食も食べ損ねてしまった。

放課後 部活が休みになったので、千夜が食べたいと言ってたクレープ屋に連れて行ってやろうと教室に迎えに行った。千夜の席は空席だった。当り前だ。千夜は僕の中にいるのだから。お陰で無駄な遠回りをしてしまった。

就寝前 千夜にお休みの電話を掛けて 千夜が出てくれるのをずっと待ち続けた。何度掛けても、留守電になるばかりで 千夜に繋がる事は無かった。それでも声が聞きたくて何度も何度も掛け直した。日付が変わり、白い光がカーテンの隙間から差し込んで来て千夜は僕の中にいる事を思い出した。

瞬間 言い様の無い感情が全身を走った。

「あ...あぁ...あ”あああぁあああああ」

違う!僕の求めていたのはこんなのじゃない!千夜の笑顔。千夜のぬくもり。千夜の香り。千夜の声。もう二度と感じる事は出来無いじゃないか!?もう二度と!?そんな...嫌だ!!

「ごめん、征。寝坊しちゃった。寝癖?嘘どこ? ...わ、笑わないでよ」
「今日は征の分のお弁当も作ってみたんだ。どう?美味しい?」
「行きたいって言ってたの覚えててくれたんだ。ありがとう。征も意外と甘党だよね」
「征、お休みなさい。また明日会えるの楽しみにしてる」

千夜千夜千夜千夜千夜千夜千夜千夜千夜千夜千夜!!

何度名前を呼んでも、胸を掻きむしっても この世界に千夜はいない。

「千夜っ、千夜っ...あああ”ああああ...」
喉から血が出る程叫び続け、赤の混じった嘔吐物の海に身を横たえながら、人間の細胞は六年で全て入れ替わる事実に気付いてしまった。





うしなう 【失う】

@持っていたものを、いつのまにか、何処かへやって見当たらなくする。物をなくす。なくなす。
A地位などをなくす。
B肉親などと死に別れる。亡くす。
今までの正常さがなくなる。普通でなくなる。
D道や方法などがわからなくなる。
E時機などをとりにがす。
F縁を切る。消滅させる。排除する。
G殺す。




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