私、森下圭は優しくて、真面目で、王子様のような赤司征十郎君の事が大好きです。




とても苦しくて とても熱いのに 幸せな 恋をしている。





夏のひと君と私




「オラッさっさと転がれよ。くるんとやってバッだろ。簡単だぜ。」
マットの向こう側で笑いながらこっちを見る男を見上げる。
「やらないって言ってんでしょ。」
「なんでだよ。ホラさっさと転がって来い!くるん、バッだ」
「意味がわかんない」
「お前がノルマこなさねーと終われねぇだろうが。」
「センセーいないんだからやったって事にしようよ。」
「ダメだ!でんぐり返りくらいやれよ!」「やらない」
「早くしろよー」
「ちょっ引っ張んないで」
私に前転させようと腕を引っ張るコイツは青峰大輝。放課後レクリエーションで私と一緒のマット運動を選択した。
『放課後レクリエーション』とは夏休みに行われる島伝統の祭りの手伝いに向け、体力をつけるため 様々な運動の中から一つ選び 放課後 毎日ノルマをこなすと言う帝光高校独特のカリキュラムである。運動が苦手な私には拷問のような制度だ。私がマット運動を選択したのは唯一室内だったのと一番楽そうだったから。
参加人数が私含めて二人だけと聞いたとき監視がキツそうで失敗したなとため息をついたが、担当の先生が
『自主性に任せる』
と役目を放棄してくれた。ラッキーと思ったのもつかの間。参加相手は熱血スポーツ少年。私がサボるのを許してくれない。
「私 前転出来ないから。」
「やる前から諦めんなよ。」
「何言われてもやんない。」
腕を払って体育館の隅に座り込む。まとわりつく蒸し暑さに夏本番が近いなぁ と思う。目をつむると大きな窓から差し込む日差しがまぶたを越して目に染みた。

「ん?なんだコレ?」
青峰の言葉に薄目を開け、視線をやる。見覚えのある紙を拾う姿に目を見開き慌ててジャージのポケットを探る。
無い。手紙が無い。
いや、目の前にある。
青峰の手の中にある!

「なになに?『私〜森下圭は優しくて、真面目で、王子様のような赤司征十郎君の事が大好「うわあああああ!!」
跳ね起きて 青峰の手からひったくるように手紙を奪い取る。
「お前、走れるじゃん。」
バクバク鳴り響く心臓を抑えながら青峰を睨みつける。
「つーか 赤司の事好きなの?」
「そうだけど、悪い?」
開き直って答える。
「悪いっつーか、その手紙から想いが全く伝わって来ねー。言葉並べただけ みたいな。お前、その手紙本当に渡す気あんのか?」




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