泣いていた。あの子と私の秘密の場所で、泣いていた。あの子と私しか知らない場所。つまりあの子に来てほしい と言う事。なのに、来てほしくない。認めたくない もう会えないなんて。

ガサリ。草をかき分ける音がした。ビクリと肩が跳ねる。足元からかすかな振動が伝わってくる。

「見つけた」

あの子の頭が下から覗く。ここは木の上。何と言う木か忘れたけど「こーよーじゅ」だとあの子が教えてくれた。だから枝が横に広がっているんだって。
あの子は私の涙をぬぐい
「もう帰ろう」
と言った。私はまた涙を流して首を横に振る。
「晴夏のお父さんもお母さんも心配しているよ?」
あの子から目を逸らしてもう一度首を振る。あの子のやわらかい声が私を包む。
「晴夏に見送って欲しいんだ」
私はひざを抱えてもっと首を振る。
「必ず迎えに行くから」
あの子の手が私の肩を包む。
「すぐには無理かもしれない。でも絶対絶対晴夏を迎えに行く晴夏の事忘れない。」
私のほっぺたを包み込んで上を向かせる。本当?と聞けば僕が嘘ついた事ある?と答えだから僕の事見送って?
こくんと首を縦に振る。

夕日を背にあの子が笑ったけど光が眩しくて顔が見えなかった。



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