入部ありがとうございます





霧崎に入学して一ヶ月。オレは何の部活に入ろうか悩んでいた。入るなら運動部かなー?部活に入らないと言う選択肢もあったけど何か楽しい事したい!膨らまし損ねたガムをもう一度噛んでいると、前方に一人の男が立っていた。んー 見覚えあるなぁ。誰だっけ?思い出そうとしていると急にそいつは歩き出して角を曲がった。
「きゃっ」「おっと」
角の向こうで誰かとぶつかったのか派手な音と散らばるプリント。
「ごめんなさい。花宮君」
女の声に ああ!花宮って新入生代表でスピーチしてた真面目じゃん! と思い出す。女の方も新入生代表だったはず。
「こちらこそ、すまない宮月さん。拾うの手伝うよ」
「ありがとう」

おやおや 何ともありがちな話〜。後オレの思い違いじゃなければ花宮クン、女が来るタイミング計ってたよね。先程花宮クンが立っていた場所に移動して廊下に設置された鏡越しに二人を見る。

「こんなにたくさんの量....大変だろ?オレを呼んでくれれば良かったのに」
「そんなっ悪いもの!」
「宮月さんの悪いところだよ。面倒事全部引き受けるのは」
「面倒だなんて...役に立てたら私はそれで嬉しいの」
頭いったーい。真面目っ子達の会話は聞いてらんないね。でも 待ち伏せしてまで宮月サンとぶつかった花宮クンの行動がすごく気になるからそのまま鏡越しに見続ける。
「宮月さんって何か部活入ってるの?」
「ううん。帰宅部だよ」
「そうか!なら是非バスケ部マネージャーになってくれよ」
「私が?うーん。役に立てるとは思えないけど」

わお!オレ絶対バスケ部入んない。二人の愛のメモリアルw何て見るつもりないしー。

「君がいいんだ」
「どうして?」
「真面目で努力家でさりげない気遣いできて、理由はいろいろあるけど....一番は....宮月さん。君の事が好きだから。僕のサポートを君にして欲しいんだ。」

あはー 今強制的に見ちゃいましたー。

「花宮君って大胆ね。こんな廊下の真ん中で告白なんて。教室には瀬戸君もいるのに」
「健太郎は寝てるから大丈夫」

クラスメイトかな?

「返事を聞かせて欲しいな」
「それはどちらの?」
「両方。なるべくいい返事で」

意外とぐいぐい行くね〜花宮クン。てかもうコレ決定っしょ?いーんじゃない?優等生カップル。誰も邪魔しな「好きでもない女子に告白して マネージャーに勧誘するなんて。暇潰し?それとも私に利用価値があると思ったのかしら。“悪童”君」

は?....今真面目ちゃんの口から何て言葉出ました?

「利用価値があると思ってくれたのなら嬉しいわ。でも利用するだけ利用して捨てようって魂胆が丸見えよ。少しはまともに女口説けるようになってから出直して来いこの眉毛」

まwゆwげw
それ思ってたけど言っちゃう?笑いそうになってガム飲み込んじゃったじゃん。さー真面目君はどうす「やだなあ、気づいてて話合わせるなんてタチ悪いよイイコちゃん。利用価値があるだなんて自惚れないで欲しいな。君は唯の玩具だよ。真面目に口説いて貰えると思うなこの天パ」

は?....嘘だろ。二人共二重人格(笑)とか うーわーないわー。
と考えている間も悪口合戦は留まる事を知らない。すごいのは二人共爽やかな笑顔ってとこだ。

「え?ごめんなさい。何て言ってるか聞こえない。カエルの鳴き声は翻訳出来ないの....って、カエルどころかオタマジャクシだもんねー。声すら発する事も出来ないか」
「てめぇに拒否権はねーんだよ。ハイorイエスだ。そのどちらかしか聞きたくねぇ。」
「やぁだァ熱烈ゥ そんなに私と付き合いたいのー?でもごめんなさい私オタマジャクシに恋愛感情とか抱けないから」
「気持ち悪ぃ有り得ねーわ!!そっちじゃねーよお前はこの瞬間からオレの奴隷!バスケ部マネージャー!!!」
「バスケ部ってそういうプレイをするとこだったの?気持ち悪いのはそっちだバァカ」
「その思考回路が気持ち悪いわバァカ。変態ド腐れビッチ」
「待ち伏せしてまでぶつかって来るとか、これだから童貞は」
「....」
「あれ?黙るの?アンタの負けね。次から他人に仕事押し付けるならもっと段取りよくやんなさい。まろまゆ君」

目の前を颯爽と通り過ぎて行く女...いや、少女と言うのがピッタリな可憐な姿にオレは動きを止めた。
うわ...宮月サン近くで見るとすっごくカワイイじゃん。よし決めた。協力してあげるよ花宮クン。

そのまま背中を追いかける。資料室の前でもたもたしている宮月サンに近寄る。
「はい、どーぞ」
扉を開ければ「ありがとう」と笑顔で返された。オレこう言う真面目ちゃんは好みじゃないんだけど、さっきの本性(?)見たから興味湧いちゃった。
「ねーマネージャーさん。オレ、バスケ部入部希望なんだけど」
資料を机に並べる背中に声かけ。
「はい?」
怪訝そうな顔で振り向く。当たり前だよねー。マネージャーになるなんて了承してないもんね。
「入部はマネージャーさんに頼んでって言われた」
さーて どう出る?じっと表情を前髪越しに観察。
「........このまま一緒に体育館へ行きましょう。入部ありがとうございます」
嘘ん。マネージャーって認めたのも驚きだけど険悪な顔からいい笑顔に変わるまでの時間が信じらんないほど速かった。

まっいーや。あの二人を特等席で見れるなんてちょー楽しみ。
そう考えていたオレを戻れるなら全力で殴って止めてやりたい。切実に。


特等席なのは間違いないけど地獄のだって....。ああ今日も暴力(言葉)の飛び火が来ないよう身を竦める日々。



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