お前も似たようなもんだろ





「じゃあ花宮君はここに座ってくれ」
「はい、分かりました」
入学式、担任に誘導されるまま体育館に並べられた簡易パイプイスの最前列に座る。

オレは入学試験で一位だったらしく 新入生代表としてスピーチを任された。
くそめんどくせぇが仕方ねぇ。ここで株を上げるのが一番無難だろう。

霧崎第一の入学式は新入生入場が無く、先に全員座らせてから始めるらしい。次々入ってくる馬鹿共がキーキー騒ぐ声に苛立ちが募る。お前等がさっさと座んねぇと始まらねぇだろうが。どうしてオレだけこんな目立つ所に一人座らされなきゃなんねぇんだよ。と考えていたら、
「宮月さんはここに座ってくれ」
「はい、分かりました」
女がオレの隣に座った。
(女にしちゃ背高ぇな。先輩か?)
ここに座ってると言う事は生徒会長か成績優秀者だろう。媚売っといて損は無い。
「初めまして。僕 花宮真と言います」
横顔に笑顔で声を掛けるとチラと視線を向けた彼女も笑顔で返した。
「宮月清佳です。宜しく」
そこで入学式開催のアナウンスが入りオレ達は前を向いた。


その時何故気づけなかったのだろう。霧崎第一高校は元男子校でオレの代から共学になったのだから女子の先輩がいるはずない。つまり隣に座っている女はオレと同じ新入生代表としてここにいる と。





(宮月清佳...ね)
成績優秀。先生、生徒からの信頼も厚く、容姿も整っていて 数週間でファンクラブなる物が作られた。しかも参加者はほぼ女子と言う(残念だったな野郎共)
正直 ここまでのイイコちゃんがこの世に存在した事に驚いた。先輩の持論を借りると コイツにも裏があるかもしれないが。

「お前も似たようなもんだろ」
幼馴染みの健太郎に言われたが オレの場合は演じてるんだよ。ああ言うイイコちゃんは大嫌いだ。虫酸が走る。
視界に入れないよう過ごしたかったが 残念な事に同じクラス。アイツが笑顔を振り撒く度モヤモヤとした感情が湧いてうっとおしかった。

体育の授業 そのモヤモヤは爆発する。


男女混合バスケ。健太郎とは違うチームになったが大したことねぇ。素人に負ける訳ねーだろ。
手を抜いても広がる点差。外野の賞賛の声を無視して、
(ま、20点くらいが妥当だろ)
嫌味にもならず、周囲に良い印象を与えるには。最後にスティールしようと伸ばした手の先に
(は?)
宮月がいた。そのままボールを放ってシュートする。ゴールリングに弾かれて 得点になる事はなかったが問題はそこじゃない。
(コイツ オレの計算狂わせやがった)

「やっぱり駄目か」
と呟きため息をつく後ろ姿を睨み付ける。健太郎に肩を叩かれるまで、交代だと気づけなかったくらいオレは最高に苛立っていた。

あーあ。オレの邪魔しなければムカつく女止まりで済んだのになぁ。利用するだけ利用してぶっ潰してやる。




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