※鶴姫視点




戦国乱世に生きる者に傷は付き物で、私は皆さんから色んな傷を見せてもらいました。













とある竜は、右目を失っていました。

「この右目はな、一生治らねぇんだ」
「一生目が見えないということですか?」
「あぁ。だがそれよりももっと深い傷をおった所があってな…」

そう言って、竜は目を静かに閉じました。













とある若虎は、腕に無数の切り傷がありました。

「虎若子さん、腕が傷だらけです」
「これは…槍の鍛練や戦場でつけた傷で、某にとってはこの傷が成長の証でござる」
「…痛くはないのですか」
「体は痛くありませぬが…」

そう言って、若虎は眉根を下げて笑いました。













とある右目は、頬に大きな切り傷がありました。

「これは政宗様につけられた傷だ。自分を見失っていた政宗様を、俺は身をていして止めたんだ」
「優しいんですね」
「いや、従者として当然のことをしただけだ。この傷よりも、俺は…」

そう言って、右目は頬の傷を軽く触りました。













とある忍は、身体中におびただしい傷がありました。

「忍者だから、これぐらいの傷どうってことないよ」
「主君が心配されるのでは?」
「あー…うん、確かに心配された。んですごい怒られた。もっと自分の身体を大事にしろってさ」
「いい主を持たれましたね」
「うん、俺もそう思う。だけど時々…」

そう言って、その忍は目を反らして唇を噛みました。














とある鬼は、腹に深い傷痕がありました。

「こんな傷どうってこたぁねぇ」
「しかし随分深そうな傷ですよ?」
「…まぁ…時々疼くけどな」
「疼く?」
「あぁ。この傷と、もう一つ…」

そう言って、鬼は遠くを見つめました。













今まで聞いてきた方々は皆、最後に口を揃えてこう言ったのです。














「…こころだ」


「こころが、痛うござる…」


「テメェのこころが…痛ぇんだ…」


「こころが痛くなるんだよ…」


「…こころ、がな…」















『こころ』

こころが痛いとは、一体何なのでしょうか。どんな気分なのでしょうか。私にはまだわかりません。

でも、

嬉しいとか、楽しいとか、

そういった感情ではないということだけはわかりました。

だって、皆さんの顔が、






何処か寂しそうな、悲しそうな顔をしていたから。



















で?みたいな(笑)