大坂夏の陣で、旦那は死んだ。出陣する前に言った言葉は嘘だったのか、と言っても、その答えを返してくれる人はもういない。
「…旦那の…嘘吐き…っ」
忍に感情なんていらない。だけど、こんな時まで感情を殺す必要はないだろう。
「……約束…したじゃんかぁ……」
涙、涙、涙。
こんなに泣いたのは生まれて初めてだった。もう枯れないのではないかと思うほどに。
『旦那……死ぬなよ』
『何を言うか佐助。俺は死なぬぞ。徳川の首を取ったら、一緒に酒でも飲もう』
『うん……約束、だからね』
『約束、だ』
この涙が止まるまで、あと何百年かかるだろう