「鶴の字」

私を呼ぶ声に、どきりと心臓が波打つ。いつからかな、彼を見るとドキドキするようになったのは。

「な、なんでしょう、元親さん」
「昨日海で沢山魚が捕れたからよォ、裾分けしてやろうと思って」

ほら、と後ろを親指で指差した先には、元親さんの子分の皆さんが私のお仲間に魚をあげているところだった。

「あ、ありがとうございます」
「………」

私がお礼を言うと、元親さんは私の方をじっと見据えた。顔に熱が集まるのがわかる。

「……鶴の字」
「ははははいっ!」

元親さんは少し屈んで私と同じ目線になった。今日初めて彼の目をまともに見た気がする。

「…お前、どうした?何か様子が変だぞ」

顔も赤いし、と言って、元親さんはあろうことか私の額に右手を当て、左手を自分の額に添えたのだ。

「熱、あんじゃねぇか?」

誰の所為だと思ってるんだとは言えず、私はただ

「だっ大丈夫です!」

としか言えなかった。

「…そうか」

腑に落ちないような顔をする元親さん。次に彼は自分の額に当てていた左手を私の右頬に、私の額に当てていた右手を左頬に当て、私の顔を挟み込むようにした。

「なっ…」

当然、私は混乱するわけで。そんな私に、彼は普段見せない穏やかな顔で言った。

「お前は女なんだから、体には気ぃ付けろよ。なんか困ったことがあったらいつでも言え」

小さな笑みを浮かべこう言った元親さん。最初はただの野蛮な海賊だと思っていたのに、本当はこんなにも優しい人だったなんて。

「……じゃあ…元親さん」
「ん?」

言ってもいいんだろうか。仮にも敵同士なのに、この想いを伝えてもいいんだろうか。でも、このもやもやをこのままにしたくない。

「…あの…私…」
「…鶴の字?」

私は両頬に当てられた元親さんの手の上に、自分の手を重ねた。武骨だけど温かみがある、彼の手に。

「…私は…元親さんのことが…」

この想いを、世界は何と呼ぶのだろうか。


















親鶴大好きなんです。