※真田鬱村。そして捏造あり 「佐助、俺は何の為に戦っているのだろうか」 夜、旦那と縁側でお茶を飲んでいた時だった。旦那がいきなりこんな事を言い出した。 「え、なに、どうしたの旦那」 俺が茶化しても、旦那は真剣な顔つきで夜空を見上げるもんだから、冗談が言えなくなってしまった。 「………旦那?」 「……今日、」 旦那な手に持った湯呑に視線を落とし、ぽつりぽつりと話始めた。 「今日、俺は城下町の視察に行ってきた。人々が賑わい沢山店が並んでいる中で、俺は一休みしようと行き付けの甘味処に寄ったのだが、そこで俺は一人の青年に出会ったのだ」 旦那はずず、とお茶をすすった。 「その青年は俺の隣に座り、俺が何者か気付いて話し掛けてきた。青年の名は又左衛門といってな、齢は17だそうだ。幸村様と同じです、と言って笑っていたな」 遠い目をして空を見上げた旦那。こんな顔初めて見るかも。 「又左衛門とは色々な話をした。趣味や好きな物、ここの店にはよく来るのか等々。幸村様がこの上田を治めてくれる当主で本当によかったと言われた時は、流石に照れたがな」 その時のことを思い出したのか、旦那は首筋を掻いた。 「そして話は将来の夢のことになった。お館様の上洛が俺の夢だと語れば、大きな夢だと賞賛された。又左衛門の夢を聞けば、医者になりたいと言っていた。何でも又左衛門の母上が病に倒れているらしく、薬も高くて買えないそうだ」 「…まさか旦那、そのお母さんを助けようってんじゃ、」 「違う。俺だってそのくらいの分別はつく。一人一人助けていては埒があかない、と言いたいんだろう?佐助」 俺の心を読んだかのように言う旦那を見て、つくづく成長したなぁと柄にもなく思った。 「その旨を伝えると、又左衛門はわかっていると言って頷いた。だから自分が立派な医者になって母上の病を治すのだ、と。そして、病に苦しむ人々をこの手で救いたいと意気込んでいた。その時の又左衛門は、すごく輝いていたな。未来があって羨ましいと思った」 旦那は湯呑を静かに縁側に置いた。 「…又左衛門は人を救うのに、俺は人を殺すのだな」 そう言った旦那の目は、すごく悲しそうだった。 「同じ齢で同じ時を生きているのに、こんなにも違うのだな」 それは仕方ないよ旦那、とはとても言えなかった。 「俺も真田家に生まれなければ、あのように誰かを救うことが出来たのだろうか」 「……」 「…父上も、母上も、兄上さえも、俺を置いて逝ってしまった」 「旦那…」 「俺は…何の為に戦っているのかわからない…!」 「……ッ」 考えてもみれば、旦那はまだ17歳だ。幼い頃から戦いに身を乗じてきたから、友人と呼べる人などいない。竜の旦那や前田の風来坊は、友達というよりは好敵手だった。真田家に生まれ、上田城の当主になったからには仕方がないと言えば、それで終わりだけど。 「……旦那。旦那が敵を殺す度に、この町の人が救われてるんだよ」 「…え、」 「それって結局、又左衛門くんとかそのお母さんを守ってることになるの、わかんない?」 「……」 「旦那は知らず知らずのうちに守ってたんだよ。だから、旦那は誰よりも輝いてる」 「…佐助」 「当主がそんなんじゃ、町の人も…俺様も心配するじゃん。元気出してよ」 俺は旦那に言い聞かせるように言った。拙い言葉だけど、わかってくれただろうか。 「それにさ、」 「…?」 もしかして旦那は、この言葉が聞きたかったんじゃないかな。 「旦那は一人じゃないよ」 俺はよしよしと、母親がするように旦那の頭を撫でた。初めは俯いていた旦那は、堪えきれなくなったのか涙を流していた。 「……佐助ぇ…」 「ん?」 「…有難う」 「…どういたしまして」 家族がいなくても、お館様や俺様がいるじゃん。 そう言ったら旦那は泣きながら、そうだな、と言って笑った。うん、やっぱり旦那には笑顔が一番だ。 17歳ってまだ遊び盛りだと思うんですよ。だから、当主として戦う幸村は偉いなぁって思ったんです。そして佐助のおかんスキル発動 ← |