「さっさとしろ家康!!春学期最初の授業が豊臣先生なんだぞ!!遅刻など言語道断だ!!!」
「家康兄さま…市も、始業式に…遅れちゃうから…」
「はは、すまんすまん!昨日の夜一狩りいってたからな!」

春。緑が生い茂り、花が咲き誇る季節。晴天に恵まれたこんな日は、のんびりとしたいところだが…パークハイム松永は、のんびりとは程遠い状況であった。

「なんだと!?貴様私の知らぬ間に狩りに興じていたというのか!!何故私も誘わなかった!!!」
「だって三成ぐっすり寝てたんだもん。起こしたら怒るだろ?」
「それはそうだが…ちなみに何を狩ったんだ」
「レイアとレウスの希少種だぞ。いや〜なかなか大変だったな〜」
「なっ…同時狩猟…だと…?」
「…兄さまたち…もう…時間が…」

102号室の徳川兄妹。長男の家康が夜中までゲームをしていた所為で寝坊し、三成と市を待たせている。妹の市がバス通学のため、兄達は市を近くの停留所まで送っていってから大学に向かうのだ。仲良きことは美しきかな。

「幸村ぁ、そろそろ時間じゃねえのか?」
「うおおおおいってまいるううう!!!」
「幸〜お弁当忘れてってるよ〜」
「佐助、私の弁当はどこだ」

203号室の真田姉弟。元親は午後からの授業だが、幸村は一限からのために朝からバタバタしていた。ちなみに元親は原付バイクで通学しているため、幸村と同じ時間から授業が始まる日は、幸村を後ろに乗せていくこともある。仲良きことは美しきかな。

「では元就兄様!スパッと行って参ります☆」
「いってきます、兄さん」
「はよう行け、遅れるぞ」

204号室の毛利兄妹。始業式故に早くから出る鶴姫と違い、元就は二限からの授業の為に未だ新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。勝家は今日は一限からなので、鶴姫と共に家を出る。鶴姫は元就に向かってビシッと敬礼をするが、元就は鶴姫を見ることもなくしっしと手で追い払う仕草をする。仲良きことは美しきかな?

「なぁ小十郎、俺の眼帯どこにあるか知らねぇか?」
「またですか政宗様!!だからあれほど置く場所を決めろとこの小十郎は口を酸っぱくして」
「政宗、ほら」

301号室の伊達姉弟+付き添い人。眼帯を探す政宗と、それを聞いて説教する政宗の付き添い人の小十郎。説教を遮り眼帯を投げて寄越すかすが。ちなみに政宗とかすがは異なる母から生まれた所謂異母姉弟。伊達家は色々と複雑な家庭環境にあった。とりあえず、仲良きことは以下略。

「んじゃ兄貴!いってくるわ!」
「慶次兄さんちゃんと朝ご飯食べてね!」
「おー、二人とも気を付けてなー…」

303号室の前田兄弟。左近と鹿之助が家を出る時間になって起きる慶次は、まだ半分夢の中にいる。それを見て左近は、兄貴らしいやと笑い、鹿之助はちゃんと食べるかなぁと心配していた。以下略。

「よし行くか!三成、市!」
「遅いぞ家康!!今度寝坊したらDS没収だからな!!」

漸く準備が整った徳川兄妹は、パークハイム指定の駐輪場に向かう。と、そこへ、

「おはようござりまする!!」
「Good morning.」

少し前に落ちあった政宗と幸村が三人に声をかけた。

「おはよう政宗、幸村!」
「よう家康!なんだお前ら、今年もチャリ通か?車の免許とりゃいいのによ」
「それを言うなら貴様もだろう、伊達」
「俺は今年取るからいいんだよ」
「あ!お市ちゃん!おはようございます☆」
「おはよう…鶴ちゃんに…勝家さん…」

少し遅れ、鶴姫と勝家も加わった。市に挨拶された勝家は、少し赤くなりつつもぺこりと頭を下げる。

「みーつなりさーん!おはようございまーす!」
「左近か…朝から五月蝿いのが来た…」
「あら!鹿くんじゃありませんか!今日から新学期、頑張りましょうね☆」
「はい、今学期もよろしくお願いします!」

最後に加わったのは左近と鹿之助。三成さん三成さんと呼ぶ左近に、三成は頭を押さえながら溜息をつく。ふと腕時計を見ると、時刻は丁度8時半。関ヶ原大学の一限の授業開始時刻はまだ先だが、関ヶ原高校の始業式は9時からだ。バスは8時40分に出発し、15分かけて生徒達を高校まで運ぶ。近くの停留所へは歩いて5分かかるため、そろそろ行かねばバスに乗り遅れてしまう。

「おい家康!もう8時半だ急ぐぞ!市が遅れてしまう!!」
「おっと、もうそんな時間か!じゃあ行こうか、市」
「うん…」
「鹿くん、私達も行きましょ!勝家兄様、いってきます☆」
「気を付けていけ、姫」
「左近兄さん、授業サボっちゃだめだからね!勝家さんに見張っててもらうから!」
「わ、わあってるよ!気を付けてな!」

高校組と家康、三成はバス停にむかって歩き出す(家康と三成はそのまま大学へ行くので、自転車を押しながら歩く)。その他の幸村、政宗、左近、勝家は自転車に乗り、駐輪場を出た。すると、

「おや、おはよう諸君」
「おはようございます松永殿!!」
「はよーッス松永さん」

パークハイムの前の道を掃いていた管理人、松永が声をかけた。

「今日から新学期かね」
「Yes.オッサンも朝からご苦労なこったな」
「伊達氏、以前から思っていたが、松永氏をオッサンと呼ぶのは失礼だ。松永氏はこのパークハイムの管理人だぞ」

管理人をオッサン呼ばわりする政宗に対し嗜める勝家。だが松永はハハと笑いそれを流した。

「いやいいのだよ勝家君。ところで政宗君…卿は去年の秋学期フル単ではなかったそうだね」
「what!?小十郎と姉貴にしか言ってねぇのに何でアンタが知ってんだよ!?」
「いやぁ、風の噂だよ、噂」
「政宗殿?貴殿は某にフル単であったと申されてはいなかったか?」

さぞ面白そうに笑う松永と幸村からの純粋な質問に、政宗はバツの悪そうな顔をする。そしてチッと舌打ちをすると、さっさと一人で歩き出した。

「あーちょっと拗ねないでよ政宗ー!あ、んじゃいってきますわ松永さん」
「朝早くに失礼致した!!」
「あぁ、気をつけたまえよ」

拗ねた政宗を追って歩き出す三人。去り際、今度31のアイス奢ってくださいねーと言う左近に、骨董品を献上したらなと笑う松永。パークハイムの春は、こうして始まったのだった。




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