体育大会当日。天気は快晴で、雲一つない青空が広がっている。登校し続々とグラウンドに集まる生徒達は皆体操服を着て、各々の団の鉢巻きを首にかけたり頭に結んだりしている。

「今日は絶好の体育大会日和りでござるな!!佐助、必ずや赤団を優勝に導こうぞ!!」
「はいはい、わかってますって」

今から燃えている幸村に仕方なく返事をする佐助。そこへ、後ろから各団の団長や副団長がやってきた。

「おいおい、勝つのはこの青団だぜ?お前ら赤団は精々頑張ったで賞で充分だ(笑)」
「頑張ったで賞は可哀想だからせめて努力したで賞にしてやろう(笑)」

青団の政宗とかすががニヤニヤと笑いながら言う。

「ま、取り敢えず優勝するのは俺達黄団だけどな!なぁ孫市!」
「そうだ。競技優勝も応援優勝も、デコレーション優勝も我ら黄団が勝ち取る」

三冠を狙う慶次と孫市が、得意げに胸を張った。

「何お前ら戯言言ってんだ!三冠は俺達白団に決まってるだろうがよォ!」
「フン。我の知略にかかれば貴様らなど屁でもないわ」

珍しく息が合っている元親と元就が高らかに宣言。

「何ですとぉ!?優勝するのは我ら赤団でござる!!」

憤慨して言った幸村だったが、次ににやりと笑い何故かギャル口調で白団に言った。

「それからァ〜前から思っていたので言わせてもらいますけどォ〜、白団は旗が白いのでェ〜振ると降参してるようにみえますぞォ〜?最初っから降参とは腰抜けでござるなァ〜(笑)」
「んだとォ!?!」
『あ〜確かに〜(笑)』

幸村の言葉に他の団も笑いながら頷く。

「…ちっきしょう……ならァ〜俺達も言わせてもらうけどォ〜黄団だって見てるとなんかカレーの匂いがしてきそうなんですけどォ〜甘口ですか辛口ですかコノヤロー的な〜?(笑)」
「誰がカレー団だカラスが」
『確かにね〜(笑)』

元親の言葉にまたも皆が頷く。

「ならぁ〜俺らも言わせてもらうけどさぁ〜、青団ってぇ〜なんかぁ〜陰気なんだよね色が!(笑)」
「んだとコラァ地球は青かったで有名なcolorなんだぞ」
『陰気だよね〜(笑)』

慶次の言葉に一同が頷く。

「……私もあんな口調で言わねばならないのか」
「当たり前だ。青団はKY団だと思われっぞ」

政宗に言われ、かすがは少し顔を赤くしながらも言った。

「で、ではぁ〜私達も言わせてもらうがぁ〜………あ、赤団は、全体的に暑苦しいのだぁ〜!
『…………』

かすがはビシッと人差し指を赤団に指して言い放った。そして黙り込む一同。全員必死に笑いを堪えているようで、小刻みに震えている。

「……〜〜っ!!」

元々羞恥で赤かったかすがの顔が、更に赤くなっていく。

「な、何だ貴様らぁ!!言いたいことがあるならはっきり言え!!」
「い、いや、かすが、可愛いなあと思ってさ…(笑)」
「そ、そうでござるな…(笑)」
「わ、笑うなぁッ!!」

かすがが顔を真っ赤にしながら怒鳴った瞬間、

【もうすぐ開会式を始めます。選手の方々は入場門に並んでください】

開会式を始める放送がグラウンドに響き渡った。

「どんまいかすがちゃん(笑)」
「気を落とすでないぞ(笑)」

励ましの言葉をかけて去る慶次や元就。他の人もかすがに微笑みながら去っていく。

「…………」

そして、政宗とかすがだけが残された。

「……そう落ち込むなよ。ぶっちゃけ可愛かった的な?」
「死ね!!!!!」

バチン!!

政宗に強烈なビンタをかまし、かすがは真っ赤な顔を膨らませながら走っていった。

「…………なんで?」

涙目になりながら頬を抑えかすがを見送る政宗は、周りから見てもとても団長とは思えなかったという。













開会式と準備体操を終えた生徒達はそれぞれの団のテントへと戻る。最初の種目は100メートル走で、三年生から走ることになっていた。

【プログラム3番は、三年生の100メートル走です。三年生はスタートラインに並んで下さい】

放送に従ってぞろぞろと横に八人ずつ並ぶ三年生。ちなみに男子と女子とで分かれて走るので、数少ない女子は男子とは違う所で走る。
男子のスタートラインには家康と三成の姿があり、三成は先程から隣でストレッチをする家康を睨み続けていた。

「何だ三成、すごい顔だぞ?何かあったのか?」
「家康ぅ…貴様には絶対に負けないからなぁ…!!」

睨みながら低い声で唸る三成。それを太陽のような笑顔で「ワシも負けないぞ!」と返す家康。

「位置について…」

係の生徒がピストルを上に高く上げた。同時に走者も腰を下ろす。

「よーい…」

そして腰を上げて、

パン!

乾いた音と同時に一斉に走り出した。真っ先に躍り出たのはやはり家康と三成で、今は家康がほんの少しリードしている。

(くそっ……私はまたこの男に負けるのか…!)

三成は前を走る家康の背中を見てぎりりと歯を食い縛った。しかし、負けてなるものかと息を大きく吸い込み、キッと前を見据えて…


「こぉろしてやるぞぉぉぉおおおおおお!!!!!!!」


カサカサカサカサという効果音が聞こえてきそうな前のめりの走りで家康を追い抜いた。

「なっ、ゴキブ…三成!?」

驚く家康を無視し、三成はぶっ千切りでゴールテープを切った。

「…はぁ…はぁ………やった…家康に勝った………家康に勝ったぞぉぉおおお!!!!!

膝立ちでガッツポーズをする三成。よほど嬉しかったらしく、本部のテントにいる秀吉に「秀吉様ぁああぁあやりましたああぁああぁ!!!」と言ってぶんぶんと手を振っている。

「はぁ、はぁ、すごいな三成…儂超びっくり」

後ろから息を整えながら家康が三成に話し掛ける。振り返った三成はにやりと笑い「どうだ見たか!」と胸を張った。しかしふと俯き、何かを思い出すように眉をしかめた。

「…そういえば家康、さっき私をゴキブリと言ったか」
「え!!あ、いや、言ってない言ってない!!」

若干冷や汗をかきながら家康はぶんぶんと首を振る。しかしそのわかりやすい嘘に、三成が食ってかかった。

「嘘だ!!私ちゃんと聞いたんだぞ!!!」
「いやいや違うんだ三成!!ただ言い掛けただけで…」
「やっぱり言ったんじゃないかアアアア!!!」

家康斬滅ぅうううう!!!!と叫びながら三成は家康の胸ぐらを掴み上下左右に揺さぶる。
と、そこへ放送がかかった。

【えーゴール前の生徒会長と副会長、そこ邪魔なんで他でやってください】

しかし聞こえないのか、二人はまだ押し問答を続けている。放送係の生徒は一回咳払いをし、二人にも聞こえるようにはっきりと言った。

【もう一度言います。ゴール前の会長と副会長、邪魔なんで退いてください】

邪魔を強調した有無を言わさぬその物言いは流石に二人の耳にも届き、全校生徒から注目を浴びている家康と三成は、すごすごと引き下がるしかなかった。

『……………すまん』

学校中が、爆笑と苦笑で溢れかえった。














その後の100m走も、なかなかに凄まじかった。


「みぃなぁぎぃるぅぅうううああぁあぁああぁあああ!!!!」

「Let's partyyyyyyyy!!!!」

「ぺぺやあああああああ!!!!」

「日輪よおおおおおおおおおおおおおお」

「孫市好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「かすが好きだアアアアアア!!!!!」



何というか、カオスだった。

「…うるさいですね男子って」
「…そうね……」
「…あのからす共が」
「………馬鹿だ」

横で見ていた女子達は、冷たい目でそれを見ていたという。





体育大会〜100m走編〜
(邪魔ってお前…)





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