「なぁトシ、自己紹介の為だけにこうしてわざわざ体育館に来させたんじゃねぇんだよな?」

慶次からの問いに、利家は勿論だ、と胸を張った。

「今日はクラスの交流を深める為に、鬼ごっこをやるぞ!」
『イェエエエエイ!』
『ええええええええ』


喜ぶ者とブーイングする者に分かれたが、利家はそれを無視して話を進める。

「一番最後に鬼になってた奴は、罰ゲームとして放課後俺の手伝いをしてもらうからなー!」

更に巻き起こるブーイングの嵐を、これも体育の授業だからと言っておさめる利家。

「逃げていい場所は、この第一体育館かグラウンドのみだぞ。校舎内は他のクラスの授業の邪魔になるから立ち入り禁止な。じゃあ最初は俺が鬼だ!十数える間に逃げろ!」

早速数え始めた利家に、慌てて逃げ出す2組メンツ。

「ほんとに強引だなトシは!」
「だがしかし勝負とあらばこの幸村、負ける訳には参りませぬ!!」
「Ha!それは俺も同じだ!」

信号機トリオが走りながら喋っている間、利家は既に追跡態勢に入っていた。

「九ー、十ー!よーし行くぞー!」
「やっべェ、もう来るぞ!」
「フン、貴様は早々に鬼になるがよい長曾我部。元の姿に戻るだけだろう?」
「あンだとォ?」
「お二人さん喋ってる暇あったら走って…ってわああああもう来たよ!!!

瀬戸内組の喧嘩に仲介した佐助だったが、利家が追い掛けてきたので走るスピードを上げてグラウンドへ向かう。

「悪い子はいねがアアアアアア!!!!!」
「前田ァ!貴様なまはげになっているぞ!」

「なに石田の兄さん俺を呼んだー?」
「貴様ではない前田慶次ィ!!」
「ははは面白いな三成は(笑)」
「だぁまぁれぇ家康ぅぅうううう!!!」

コントのようなやり取りを繰り広げながらも逃げる関ヶ原組。

「おひゃあああああ前田さん怖いです姉さまああああっ!!」
「しっかり走れ姫。これはリアル鬼ごっこだぞ」
「孫市…それ…ちょっと…違う……かすがもそう…思わない…?」
「確かにそうだな」

数少ない女子はというと、四人固まってグラウンドの隅へ逃げていた。

「俺様最強だから捕まんねぇもんなーっ!」
「貴方が最初に鬼になりそうですね」
「ぼ、僕も負けないぞ…!」

武蔵・宗麟・金吾という異色トリオがひた走る。

「どうして僕まで……っ!?グハァッ!!
「!!」
「前田殿おおおお竹中殿が吐血しましたァアアアア」

風魔と小山田と走っていた半兵衛がいきなり吐血したので、小山田が追い掛けてくる利家に向かって言った。

「半兵衛様ぁああぁあああぁぁあ!!!!!!!」

そして即座に駆け寄る三成。

「前田ァ!半兵衛様をこのゲームから離脱させろ!!悪化したらどうするんだこのクズが!!」
「ひっでぇのな石田の兄さん俺をクズだってさ」
「だから貴様ではない前田慶次ィィイイイ」

血管が千切れるのではないかと思うほどこめかみを引きつらせて叫ぶ三成。だがその手はしゃがみこんでいる半兵衛の背中を超高速でさすっている。

「みっ…三成くん…さすってくれるのは嬉しいけど…ゲホッ…ちょっと速度を落としてくれないか…摩擦で熱いんだけど…」
「はっ、すみません半兵衛様!!」
「ははっ、確かに火災源が竹中殿じゃ洒落にならんな〜」

追い付いた利家が笑いながら半兵衛の肩に手を置く。

「配慮が足りず無茶をさせてしまったことを許してほしい竹中殿。保健室で休んでいてくれ」
「あぁ…そうさせてもらうよ…」

半兵衛は立ち上がり、よろよろとその場を去っていく。

「半兵衛様、私もお供致します」

自身を支えようとした三成を、半兵衛は心配はいらないと言って拒んだ。

「君はこの戦いに勝たなきゃならない…僕の分まで頑張ってくれ…」
「は、はい…!!!」

そのまま保健室へと向かう半兵衛を、きらきらした目で見つめる三成。と、そこへ近づく黒い影。

「…さて、竹中殿も保健室へ行ったことだし…」

そして利家は、三成の肩にポンと手を置いた。


「石田殿が鬼だなっ☆」


そう笑顔で吐き捨てて全速力で駆けていく利家。

「な…!?」

呆ける三成を差し置き、未だ逃げる他の生徒達に向かって、担任教師は叫んだ。

「次は石田殿が鬼だぞーーー!!!!\(^o^)/ヒャッホー」

一呼吸置いて気付いた三成も、負けじと叫んだ。

「前田貴様ぁあぁあああぁあああ!!!!つかヒャッホーって何だ」
「何俺やっぱなんかした?」
「貴様ではないと言っているだろうが前田慶次」













あの後、三成は血眼になって追ったが、誰一人として捕まえることは出来なかった。というか、一人しか追わなかったから当たり前なのだが。

「待て家康ぅぅうううううう!!!!」
「あはははこっちだぞ三成〜(笑)」

まるで愛犬と戯れているかのようだと後の人々は語った。ちなみに、ちゃんと利家の手伝いはさせられたという。

「あれが犬なら俺様絶対捨てるね」
「犬を捨てるなど言語道断だ佐助ェ!!!!」
「いやもしもの話だからね旦那」




鬼ごっこ
(あんな犬絶対嫌だ)





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