「……うぅ…」
目が眩むようなまばゆい光に包まれぎゅっと目を閉じていた遥は、光がおさまったことを感じそっと目を開けた。
「…ちょっともう…なんなの一体……って……え…?」
「おかえりなさい、遥さん!」
遥が見たのは、先程いた神社とは違う景色だった。神社の内部の構造は同じだが、やけに造りが新しい。また、丁寧に祀られてあった弓矢は見当たらなくなっていた。そして一番の違いは、目の前にショートボブの少女、その後ろには同じ色の甲冑を着た男たちがずらりと並んでいることであった。少女の前には水晶玉があり、ほのかに光を帯びている。
「あ…えと…あの…貴方、たちは…?」
「あっ、そうですね!久しぶりに会いますし、記憶が薄れるのは当然ですよね!申し遅れました、私の名前は鶴姫です。おかえりなさい遥さん!」
ショートボブの少女鶴姫は、にこりと遥に笑った。しかし遥は、にこりとも笑い返すことができない。今の状況を未だ把握できていないからだ。
「あの…おかえりなさいというのは、一体どういう…?」
「あっそうだ!皆さんをお待たせしているんでした!遥さん、行きましょ!皆さん首をながぁぁくしてお待ちかねですよ!私の船の皆さーん、後片付けを頼みました☆」
「了解です姫御前!」
「えちょ、ちょっと!鶴姫さん!?話を聞いてください!」
遥の質問には答えずに、強引に手を取って駆け出す鶴姫。神殿の外へ出るとそこは長い階段となっていて、鶴姫は遥の手を握りしめ階段を下っていく。
「あの、鶴姫さん、色々と聞きたいことがあるんですけど!」
「それは皆さんにお会いしてからです!あと、私のことは昔お呼びしていた通り鶴ちゃんでいいですよ☆」
「いやその、だから、その皆さんて誰ですか!?」
階段を下りきった鶴姫は、閉まっている扉の前で足を止めた。そして、扉の向こう側にいる『皆さん』に聞こえるように、こう言った。
「皆さーん!お待たせしました!遥さんが、この世界に帰ってきましたよー!!」
ゆっくりと開かれる扉。差し込む太陽の光。そこで遥が最初に見たのは、逆光の中に立つ大勢の人間の姿だった。そして、最初に耳に飛び込んできたのは、
「遥殿おおおおおおあああああ!!!!!」
鼓膜が破れそうなほど大きな、遥の名前を呼ぶ声だった。そして遥は次々と声をかけてくる人に対し、次のような感想をもつ。
「五月蝿いよ大将!ていうか遥ちゃん、おっきくなったねー!」
迷彩服を着た忍者っぽい人。
「Long time no see。元気にしてたか?」
英語を話す青い人。
「はは、目がまんまるだぞ!」
体格がいい黄色い人。
「遥ちゃんひっさしぶり〜!あん時も可愛かったけどもっと可愛くなったんじゃない?」
ポニーテールの黄色い人。
「遅い!一体どれほど待たせる気だ!」
なんか怒られてしまった銀髪の人。
「うひゃー!こりゃまた一段とべっぴんさんになったねー!」
頭がツーカラーのチャラい人。
「…貴方のことを、待っていた…」
ハクさま…?
「遥!俺のこと覚えてっかぁ?」
左目を隠した紫の人。
「我のことを忘れたとは言うまいな」
すごい上から目線な緑の人。
「おかえりなさい遥さん!僕たちずっと待ってました!」
まだあどけなさが残る茶髪の少年。
「え、えと…」
大勢の男たちに囲まれ、遥は尻込みした。しかし、皆遥に敵意はなく、寧ろ遥と会えたことを喜んでいる。そのことに安堵した遥は、聞きたいことは山ほどあれど、取り敢えずはこう返すことにした。おかえりと言われれば、返す言葉はただ一つ。
「た、ただいま!」