「…すみません…なんか辛気臭い空気になっちゃいましたね…」
そう言って無理して笑う夏希を見て、彼女は嘘をついていないと、誰もが思った。
住
「…そうだったんだ…」
佐助は手にかけていた手裏剣を離して呟いた。幸村は正座を崩さずに俯き、政宗と小十郎は何かを考えるように畳に目を向けていた。元親や慶次は眉根を下げて夏希を見やり、元就は無表情ながらも眉間に皺ができていた。
「…取り敢えずそういうわけなので…あいつらには言わないでくださいね」
困った顔をして軽く笑う夏希。
「…あ、そだ。貴方達は、これからどうなさるんですか?」
「え?どうって…」
「戦国時代から来たんですよね?これから此処でどうやって生活するおつもりですか?迷惑でなければ、あちらに帰るまでうちに住みます?部屋ならいっぱいありますし、服もあいつらに買わせれば問題はありません。食料はまぁ何とかなるとして、あとは…」
「ちょ、待って待って!」
一人で考え込む夏希を、佐助は慌てて制した。
「夏希ちゃんはさ、俺達が過去から来たって信じるの?こんな胡散臭い連中、そうそう信じられるもんじゃないよね?」
「信じます」
間髪入れずに答える夏希。
「…何故でござるか?」
「だって、貴方達を見ればわかりますよ。武器持ってるし凄い服着てるし、何より普通の人と纏う空気が違う気がするんです。それに…」
『?』
「長年の経験と勘から、悪い人達じゃなさそうだなって!」
屈託のない笑みを浮かべて言った夏希に七人は驚く。
「…それで、どうします?」
「……政宗様、如何なさいますか」
「Hum…」
「旦那、」
「……」
それぞれ従者が主に問う。他の武将達も、考えているようだった。
「……夏希」
「はい」
覚悟を決めた武将達と目で会話し、政宗は口を開いた。
「………頼む。ここに置いてくれ」
「お安い御用です!」
夏希は先程と同じように笑って胸を張った。
「そうと決まれば、色々準備しなきゃいけませんね!おい野郎共!!集合!!」
『へい!!』
夏希が大声で叫ぶと、ドタドタと廊下を走る音が近づき、直ぐ様障子が開かれた。
「今日から彼らがここに住むことになった。異存はねぇな」
『ええええ!?』
「お嬢!それどういうことッスか!?」
「何故いきなりこいつらを住まわせることになったんですかぁ!?」
当然の如く慌てる子分達。それを、夏希はギロリと睨んで黙らせた。
「私が決めたことに口出しするたァ…いい度胸だなお前ら」
ヒッ、と息を呑む子分達。武将達も、夏希の怖さに思わず身震いする。
「もう一度聞くが…異存はねぇな野郎共」
『へ、へいお嬢!!!』
満足そうに頷く夏希を見て、七人は夏希が実は二重人格なんじゃないかと思い始めたのであった。
「取り敢えずその服装じゃアレだな……龍、亮太、和輝、速攻でユニ○ロかしま○ら行って服を見繕ってこい」
『へい!!』
「健、拓也、弘樹、佑介は奥から布団を七人分引っ張り出せ。臭かったらリセ○シュしろ」
『へいッ!!』
「辰之助と昴はこの家を案内してやんな。トイレとか風呂の場所とか色々教えてやってくれ」
『わかりやしたお嬢』
「後の野郎共は夕飯の支度だ!今日は客人がいるから豪勢に振る舞いな!!蔵の酒も持って来い!!」
『承知致しやした、お嬢!!』
てきぱきと子分達に指示する夏希。子分達は我先にと持ち場についていく。武将達はそれを口を開いて見ていることしかできなかった。
「なんか俺と同じにおいがする…」
元親がぼそりと呟いたその時、前庭が一瞬ピカッと光った。夏希や七人が慌てて障子が開けられて丸見えになった前庭を見ると、そこには―…
「…ど…何処なんだここは……はっ、謙信様は!?」
「………」
「かっ、かすがに風魔ぁ!?」
忍二人が揃って立っていた。
「ふ…増えた…」
暫くぽかんとしていた夏希だったが、気を取り直して散り散りになって準備している子分達に向かって声を張り上げた。
「野郎共!!二名様追加だ!!」
『ええええええ』
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