広い客間に通された七人は、小十郎と佐助以外全員横一礼に並んで座った。あとの二人は主の後ろに一歩下がって座っている。そして向かいにどかりと座るのは、先程子分達に怒鳴った夏希である。





「野郎共、下がれ。話を聞くのは私一人で充分だ」

障子を開けて廊下にずらりと並んだ子分達に向けて夏希は言った。

「しかしお嬢、こいつらがお嬢に何かしたら…」

「いくらお嬢と言えど野郎七人相手じゃ…」

夏希を心配する子分達。しかし、夏希はそんな子分達をギロリと睨む。

「私がこいつらに負けると思ってんのか…?」

『いいいいいえ滅相もねぇ!!!』

「だったら出ていけ。そして話が終わるまでここに近付くな。もし聞き耳でも立ててみろ…わかってんだろうな?」

『わっ、わかりやしたぁあああ!!!!』

慌てて障子を閉めてその場を去っていく子分達。七人はというと、そのやり取りを呆けながら見ていた。というよりも、大勢の男達に指図する夏希を見ていた、と言う方が正しい。
ドタバタという音が聞こえなくなるまで、夏希は目を閉じて胡坐をかいていた。

『………』

暫く沈黙が続いたが、不意に佐助が、状況を打破する為に夏希に話し掛けた。

「あ、あのー、俺達どry」

「本当にすみませんでしたぁあぁぁあああぁあああああああああ」

『……え?』

いきなり謝る夏希に今度こそ呆ける武将達。いつの間にしたのか夏希は胡坐から正座に変え、畳に頭を擦り付けるように土下座をしていた。

「え、あの、ん?」

「いやほんとさっきはこいつら呼ばわりして本当にすみませんごめんなさいしかも見ず知らずの方々にあんな所見せちゃってあたしどうかしてますよねそうですよねああああ恥ずかしい取り敢えずごめんなさいこうなればけじめを着ける為に切腹しなきゃですよねうんじゃあそこの青い方刀一本貸して下さい腹切りますんでプリーズレンドミーKATANAプリーz」

「ちょ、落ち着いてお願い落ち着いて!!」

「い、いけませぬぞ自害は!!」

「早まるなよお嬢ちゃん!!」

「娘が切腹など物騒なこと言うな!!」

「やめとけ嬢ちゃんまだ先は長ぇぞ!!」


「自暴自棄になっておるな」

「ほう、英語喋れんのかあんた」

「そこじゃありませぬ政宗様」

切腹すると言い出した夏希を必死で宥める武将達。

「てかさ、あんたさっきと態度違くない?」

佐助に言われ、赤くなった額をさすりながら体を起こす夏希。

「それなんですが……あの…最初に聞きますが、貴方達は光と共に現れたって本当ですか?」

「あぁ。なんかよォ、瀬戸内海で毛利と戦ってたらいきなりここに飛ばされちまって」

「……毛利?」

怪訝な顔で聞き返す夏希。

「我を呼び捨てにするとは何事ぞ」

「あ、いや、すみません…あの、失礼ですがお名前を伺っても…?」

「我が名は毛利元就。日輪の申し子なり」

あからさまに驚いた顔をした夏希は、順に名前を聞いて言った。

「その隣の貴方は…」

「某は真田源二郎幸村にござる」

「真田!?…隣の貴方は…」

「俺は前田慶次ってんだ。よろしくな」

「パチンコの…?お隣は…」

「奥州筆頭伊達政宗だ」

「伊達まっ…!…貴方は…?」

「西海の鬼、長曾我部元親だ」

「長曾我部…!じゃあ、後ろの…」

「政宗様の右目、片倉小十郎だ」

「……わかんないな…最後の貴方は…」

「俺様は人呼んで猿飛佐助」

「忍者の…!……えーと…これはどういうことだ…?」

全員に名前を聞き終わった夏希は混乱していた。それもその筈、授業で習った戦国武将がここに並んでいるのだから。

「どしたのお嬢ちゃん」

「えと…すみません…もう一つ聞きますけど…貴方達は何時代から来たんですか…?」

夏希からの問いに、佐助は主である幸村に答えを求めた。

「何時代か?…旦那、俺様達がいた時代って何時代?」

「む?………………ん?」

「もういいよ。片倉の旦那、わかる?」

「ふむ……まぁ、戦国時代ってところだろうな」

戦国時代

それを聞いた夏希は、信じられないと首を振った。

「……ということは…貴方達……」













「戦国時代から来たんですか!?」









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