後一日、厳密にいうと後二十時間ちょいで地球は地球の外側を回っている外惑星とぶつかって木端微塵になるらしい。それは大昔から予言されていて、最近になって科学者たちが騒ぎ始めてニュースにならなかった限り誰も信じていなかった。ノストラダムスとか、いろんな予言が外れたのと同じパターンだと思っていたが。こくこくと惑星が地球に迫っているせいか酸素が少なくなっているのだろう。やけに息苦しい。ごほっと咳をすると目の前で黙々と勉強を続ける奴に睨まれた。


「もうじき死ぬってのに呑気なもんだな。」
「明日はテストよ。あんたこそ呑気なものね。」
「ばぁか。テスト受ける前に死んじまうっての。」
「そんなの分からないでしょ。もしかしたら惑星は地球とぶつかる前に軌道を変えるかもしれない。」
「めでたい脳みそしてるんだな。」


茶化すなら帰ってよ、そう言って分度器を投げられた。先が尖ってる三角定規じゃなく丸い分度器を投げつける辺り本当に素直じゃない奴だ。ぱらりと数学の教科書をめくる指、シャーペンを持つ指、小さく震えている。じっくりと見ないと分からないぐらい小さく小さく震えていた。強気な態度はいつもと変わらないが内心はどうしようもなく不安なのだろう。そこで俺は抱きしめるとか吐きそうなぐらい甘ったるく勇気づけるなんてことはせず、ただ問題をひたすら解く姿を見ていた。


「私、明日のテストも百点取ってみせるわ。」
「ふーん。次取れば連続三十回目だっけか?」
「うん。知ってる?不動って百点取ったときだけ褒めてくれるの。」


んなもん知るか、呟くようにそう言うと少しだけはにかんでまた教科書に目を落とした。この為にいつもテスト前はいつもじゃ考えられないぐらい血眼になって勉強に励むのか。なぜそんなに勉強するのかと前に聞いたことがあるが、そのときは百点がとりたいからと答えていたのに。こういうときだけ素直になるなんてあざとい奴だ。こいつがデレるなんて。やっぱりこいつも諦めてるのだろう。明日テストを受けることを。


「・・・ここはこの公式使うんだよ。百点取るならこんな応用解けなきゃ意味ねぇだろ。」


止まっていたシャーペンがまたサラサラと動き出す。苗字の横顔はどこか嬉しそうで、とんでもなく馬鹿みたいな顔をしていた。それを言ったらぶち切れそうで言うのをやめた。俺も今日は無駄に優しい奴だな、そう思うと気分が悪くなった。



20120128
夢で逢いましょう

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -